「
試してみよう」
01
憧れのロイヤルカツサンドを旨そうに頬張るだらしない口元をじっと見つめていると、机の下で脚を蹴られた。
「痛いよ、知巳ちゃん」
「だって、翔也ばっか見てんだもん」
「ふふ〜ん、守は俺にぞっこんなのさ」
「むきぃ!」
「あほか。カツサンド見てたんだよ」
ぽんぽん、と知巳の小さな頭に手を置く。
やわらかい髪の毛がトゥルットゥルだ。
「なーんだ」
可愛らしいお顔に、可愛らしい笑顔が戻って、ほっとした。
そうそう、知巳はそうやって笑ってるのが一番いい。
「翔也のばーか」
机に下ろしたオレの手の指を、両手でニギニギしながら知巳が翔也にむかって舌を出す。
「英語赤点の奴に言われてもなぁ」
「理数は翔也よりイイもんね〜!」
耳の両側から大音量。
うるせぇなぁ。
飯ぐらい落ち着いて喰えっての。
「愚民どもよ、喧嘩はやめたまえよ」
「体育以外全滅の守に言われたくねーな」
翔也に耳たぶを捕まれて軽く引っ張られた。
ひゅっと細められた目元に色気がある。
そういや、流し目が堪らないとか女子が騒いでいたっけ。
ち。
イケメン爆発しろ。
「守は頭ん中まで筋肉だもんね」
「なんだよ、知巳まで」
膨れて見せたら、えへっと笑う。
小悪魔かこいつは。
三人それぞれタイプは違うけど、頭のレベルは似たり寄ったりで、補習や追試で居残るうちに仲良くなった。
二年になって、オレだけ違うクラスになったけど、昼休みは一緒に飯を食う。
場所は音楽準備室。
誰も来ない静かな秘密基地だ。
「守、これ食いたいの?」
「え? くれんの?」
食いかけのロイヤルカツサンドが俺の方に向けられた。
思わず笑顔になる。
が。
「まさか!」
オレの手が届く前に愛しいそのサンドウィッチは、無駄にエロい口の中に消えていった。
ちくしょう。
きゃあ、翔也くん超イケメン、抱いて、と思った一瞬を返せ。
「うまい」
「殺す」
長くて細い首を絞める。
フワリとコロンが香って更に怒りが増幅だ。
イケメンめ。
「あー。翔也ずるい」
「ズルいって……」
知巳の的外れな発言に力が抜けた。
天然にはかなわない。