「
会長性徒会」
01
重厚な生徒会室の扉を開けると、室内にいた生徒会メンバー全員の視線が俺に注がれた。
その勢いに、少したじろぐが、眉を上げるだけに止める。
動揺を悟らせるなんて俺のキャラじゃなねえし。
「何だ、全員いるなんて珍しいな」
俺たち生徒会役員は全員、性格はともかく能力の優秀さは折り紙つきだ。
イベントの前などの繁忙期以外は、各自の仕事が終わっていれば生徒会室に顔を出す必要はなく、全員が揃うなんて稀だ。
まあ、俺は毎日いるけどな。
……暇人とかじゃねえよ?
会長の承認印がいつ必要になるか分からないじゃないか。
仕事が滞ったら大変だからな。
「会長」
会長席に向かおうとすると、副会長がすぐ傍に近付いて来た。
にっこりと微笑んではいるが、しなやかな無駄のない動きは肉食獣を思わせる。
ちょっと待て。
近付きすぎじゃないか?
「……何だ?」
「最近、ご執心だった方に袖にされたと耳にしました」
「!!」
俺の耳元に顔を寄せた副会長が声を落として口にした内容に、俺の頭の中が真っ白になる。
慌てて周りを見ると、生徒会のメンバーが俺たちに注目していた。
声を落としたといっても、静かな室内ならば離れていても聞こえるレベルだ。
……この腹黒が……!!
「カイチョー、かわいそ〜」
「……(こくこく)」
「辛いよね」「悲しいよね」
それぞれが哀れみの色を浮かべた目で俺を見る。
やめろ、やめてくれ。
「プライベートの事だ。口出しは必要ない」
そっとしておくのがデリカシーと言うものだろう。
「いえ、そうはいきません」
会長席に向かおうと足を踏み出すが、副会長がその進路を阻む。
「退け」
「できません。あなたには休養が必要です」
「要らん」
その横面を張り倒せば、このうそ臭い笑顔の仮面を剥ぎ取れるだろうか。
いけ好かない副会長の取り澄ました顔を睨み付ける。
「カイチョー、とりあえずさあ、お茶しよ〜よ〜」
ふわりと、紅茶の芳香が間延びした会計の声と共に緊張した空気を遮った。
「「お菓子もあるよ」」
双子補佐の手作りの焼き菓子が皿に盛られて甘い香りを漂わせる。
「……こっち……」
書記に袖を捕まれてじっと見つめられる。
皆して何なんだ……全く。
「……分かった」
仕方なく促されるままソファに腰掛けた。