「
会長性徒会」
12
で?
何でこいつらまで帰らねえんだ?
ソファで目を閉じている俺の周りで騒ぐメンバーがうぜえ。
基本的に煩いのは会計と双子補佐だが、たまに聞こえる副会長の声は癇に障るし、無言の書記の視線が纏わりついてくるのが気持ち悪い。
帰れよ。
俺は独りになりたいんだ。
と、怒鳴りたいところをぐっと我慢してソファに丸まる。
口を開いた途端に会話になってしまうのが許せない。
俺はあいつらを拒絶したい。
存在を認めねえ。
「あ、そだ、カイチョーは結局誰が好きだったの〜?」
ああ、そうだった。
敏感過ぎるほどに空気を読んで、なおその空気を破壊するのがお前だよ、会計。
「柔道部主将?」「剣道部主将?」
「う〜ん? ラグビー部の部長とか〜? あ、意外と新任の体育教師だったり?」
「風紀委員長クラスでないとつとまらないんじゃないですか?」
「あはは〜! それじゃ誰もだめじゃ〜ん」
「「僕らの親衛隊長は?」」
「あ〜、あの熊さんは、確かに強いよね〜」
皆して勝手な事を言い出す。
その会話に次々と挙がる名前に俺の眉間には皺が浮かび、胃の辺りがぐるぐると気持ち悪くなる。
ありえねえ。
ない。
ないない。
「何で俺がそんなむさ苦しい奴らを好きにならなきゃいけねえんだよ!!!?」
だから、俺はタチなんだ。
俺より明らかにガタイの良い、汗臭い奴らに突っ込む趣味はねえ。
「「え? だって会長」」
「ネコになりたかったんだよねえ〜?」
目を丸くしてこてりと首をかしげる双子の横で、会計のでかい口が弧を描く。
「もう、十分ネコですから、ご安心ください」
「うふっ! オレたちカイチョー思いだからあ〜」
にっこりと綺麗に笑う副会長。
…………。
……。
確かに、言った。
3日前の中庭だ。
昼食時、数ヶ月前からいつも寄ってくる野良猫に餌をやるうちに情が沸いた。
その猫のために缶詰を持参する日々。
ところが最近、その猫に恋人ができたらしい。
姿を見せることが少なくなり、毛並みを撫でようと手を伸ばすと威嚇されるようになった。
「やっぱりネコじゃねえとダメか?」
茂みに隠れる後姿に向かって、確かに俺はそう呟いた。
呟いたな。
「!!!!」
そういう意味じゃねだろ???
人って怒りを通り越すと、真っ白になるんだな。