弱酸性のくせに

06

ボディソープの優しい香りに混じる、アンモニアの独特の匂いに、眦から涙が零れる。
しょわしょわ漏れる小便が何ともいえず気持ちがいい。

「……ァ…………あ、あ……」

勢いがない代わりに中々途切れない小便に長い心地よさが続く。

「……たかし」

「っ! ……や、みん、なっ……」

大井の吐息のような呟きに我に返った。

「やっ! ……ン、ふっ……とまん、ね……」

見れば、小便が俺のチンコを支えている大井の手を汚していた。
離せばいいのに、律儀に支える大井に目の前が暗くなる。

小便を止めようとするが、止まらない。
ならば大井から逃れようとするが、それも上手くいかない。
何故だか大井は俺を戒めて離そうとしない。

小便がかかってるっていうのに!

「バカおおいっ! 離せって!」

腰砕けの下半身が重たい。

……しかも、まだケツの穴は痛いんだ!

「たかし……どうしよう……」

「あぁん?」

焦る俺に大井が情けない声で呼びかける。
後ろを振り返ると、ハの字眉毛のイケメンが困ったように笑っていた。

「今のおしっこに興奮しちゃった……」

イケメンの視線をたどると、そこにはガチガチのチンコが股の間に起立して脈打っていた。



俺の小便がぴたりと止まったのは言うまでもない。




 ◇ ◇




首にタオルをかけて浴槽の縁に腰掛ける俺は、燃え尽きていた。
そりゃもう、ジョーもびっくりの真っ白さ加減だ。

その足下で大井が頭を下げている。

「ほんと、ごめんなさい! 許して、ね? ね?」

いかにも哀れそうな大井の表情と声音に神経を逆撫でされて、イケメンの整った鼻筋にボディソープのボトルを押し付けてやった。
面相が変わったって知ったこっちゃない。

「ここをよく読め」

近すぎて読めないだろう事は承知の上だ。

ボトルを受け取った大井が目をシパシパさせた。

「……傷・湿疹などお肌に異常のあるときは使用しないでください。お肌に赤み・かゆみ、刺激等の異常が現れたときは、使用を中止し、皮膚科い・・・「メーカーの忠告だ。肝に銘じろ」

「……はい」

殊勝な態度の大井に大様に頷く。

今度の給料日に何か奢らせて、まあ、それで水に流してやろう。
そんな事を考えていた俺に、大井が女性社員ならイチコロな爽やかスマイルを見せた。

「大丈夫だよ。俺、たかしのおしっこなら飲めそ…………ぐふぉっ」

「それは慰めでも何でもないからな」



金輪際、一緒に風呂に入らない。
そう誓った俺だった。


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