弱酸性のくせに

02

後ろからイケメン君が抱きしめてきた。
二人の間でボディソープがにゅるりとぬめって、妙な感じだ。

「崇が体洗わせてくれるなんて、貴重だし! 一緒にお風呂入るのだって、2回目だよ」

そうだったか?

そもそも、風呂は独りでゆっくり入るものだろう。
大井と入ったってウザイに決まってる。
ああ、そうだ。
1回目で懲りたんだった。

「楽しくって〜」

鼻歌が再開するとともに、大井のスポンジを持っていないほうの手が俺の肌の上を滑る。
わき腹から這い上がって、少しだけ浮かび上がる肋骨の形を辿っていく。
薄い大胸筋の形を掌で確かめながら、褐色の飾りの周りを焦らす様に指先がくすぐった。

昨夜の快感の残滓を浮かび上がらせるようなその動きに、腰の奥がじんと痺れたように熱くなる。

「ふざけるなら出る」

硬い声を作って、悪戯な手を割りと強い力で押す。
じゃれていると勘違いされたら厄介だ。

確かにかったるいけれど、どうしても動けないわけじゃない。
「洗いたい」というから、洗わせてやっているんであって、洗わないんなら用はない。

「ごめん、ごめん! わかったよー」

ぱっと体を離すとホールドアップの格好をする大井に満足して、その胸に背中を預けると、大井がスポンジを丁寧に動かし始める。

「そうだ。軽く処理しておいたけど……おなか平気?」

「ん? ああ、特に……」

下半身にスポンジを移動させた大井がトーンを落とした声で聞く。
昨晩は、コンドームを使用しなかった。
ゴムを付ける僅かな間すら待ちきれなかったのはお互い様だ。
大井の所為じゃない。

「ごめんね。俺も眠ったくて。ちゃんとしてあげられなかった」

「いや、それはしょうがねえし。平気っぽいから大丈夫」

もともと、行為で腹を下した事はない。
怒っちゃいないし、むしろ、疲れきった体であれだけ盛った後に俺の世話までしてくれていた事に感謝すべきだろう。

「……一応さ! 洗っとこう? ね?」

すっと股の間に手を差し入れる大井を軽く睨みつけるが、特に何も言わなかった。
どっちにしろ、股だって、ちんこだって洗わなきゃしょうがない。

変な動きをしやがったら、肘鉄でも食らわせればいいか。






と。そんなことを思っていた俺がバカだった……。


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