誕生日は

01

甘い匂いが鼻につく──。

「ふふ」

にやりと笑う口元をぼんやりと眺める。
先端をアナルに差し入れたシリンダーから桃色の溶液が少しずつ押し出されていった。
内壁に感じる冷たさに身震いする。

「お楽しみはこれから、な」

徹は、こくりと頷いた。







薄い制服のシャツのを通して伝わる掌の生暖かさが気持ち悪い。
背後から回された無骨な両手は、徹の平べったい胸の上を撫でている。

「……っふ……」

たったそれだけの事に快感を得る体が疎ましかった。

掌は絶えず微かな刺激を立ち上がった小さな二つの突起に与えてくる。
もどかしい甘い刺激。
堪えようとする努力も虚しく、吐く息が熱くなる。

徹には、ただ身を強ばらせて耐える意外に術がない。


平日の夕方、もう少しで18時を回ろうという時間の電車の中。
徹が普段使用している路線ではなかったが、どこの路線であってもこの時間帯の混雑具合は似たようなものだろう。

人と触れ合わないでいることが不可能な程の乗車率。


だが、徹の胸元を這う手は意図されたものに間違いない。

掌の微かな刺激で立ち上がった突起の上を、指の平が掠めていくような動きに変わった。

皮膚よりも柔らかな乳輪の上をくりくりと円を描くように辿られる。
きゅうっと立ち上がる突起はその合間に何気なく弾かれた。

その度にひくりと肩が揺れる。

自分のものではない荒い息遣いが耳元に近づいた。

「感じやすいんだ?」

掠れたような低音が耳朶をくすぐる。

わかりやすい挑発。

受け流そうとする理性とは相反して、体は刺激に対して素直だった。
ぞくぞくと背筋が震える。

「んぁ……」

かりかりと爪て突起を転がされ、甘い声が漏れた。

快感に負けじと、徹はぎゅっと目をつむり更に体を硬くした。

男の指が、突起の形を楽しむように蠢いている。
暗くなった視界の中、いやらしいその動きを余計に敏感に感じ取ってしまう。

「……凄い、立ってるね」

耳に吹き込まれる淫らな毒に、徹の脳が犯されていく。

ずくずくとした快感への誘惑。
体が欲してやまないその甘美な誘いに、必死に抵抗していた。

「っんぁあ……!」

ぬるりとしたものが耳に差し込まれ水音をたてた。
と同時に、微かな刺激に震えていた突起が強く摘まれ、急な刺激に背中がしなった。
快感からか不快感からか、背筋にぞくぞくしたものが伝わる。

「あ、あ、だメ……」

べちゃべちゃという水音にに混じる捕食者の荒い息に、徹の理性が食い散らかされる。
無意識に胸を突き出して、突起への刺激を強請る。
ゆるゆると腰が淫らに揺れる。


──甘い匂いが徹の嗅覚を掠めた。


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