誕生日に


02

こいつとは、高校に入学して暫くしてから何となく知り合った

野球部で根っからの真面目なこいつと、部活も入らずふらふらしているバカモノな俺。
関連性のない俺らは友達の友達の友達だ。
皆で遊ぶ時に顔を合わせて、俺は何度かめで存在を認識した。
だって、こいつ、滅多にしゃべらねえもん。

仲良くもなければ、悪くもないってのが、こいつと俺の間の微妙な空気。
皆で遊ぼうぜって時の一員って位置。
二人で会うなんてなかったし、二人で話すなんてことすらない。


なのに、なんでか、俺はこいつの横顔を見つめている。


カラオケ行く時も、ゲーセンで時間潰す時も、こいつの横は俺のもんだ。
部活が忙しいこいつと遊べる機会はあまり多くない。
クラスだって離れてる。
見られるときに見ておかなくちゃ、もったいないだろ?

はじめは、こいつのごつごつした体や、さっぱり刈られた頭なんかが、何となく物珍しくて目で追っていた。

そのうちにむらむらとわきあがってくる欲求に、暫く気づかないふりをしていた。
自分でも信じられなかったから。

触れたいと思った。

日に焼けた褐色の肌に。
驚くほど白い、服に隠れた肌に。

滑らかそうな皮膚。
硬く引き締まった筋肉。
ごつごつ隆起した関節。

触れたい!
むしろ舐めたい!
噛み付きたい!

やばい、変態だろう。
そんなこと、急にしたら。
お願いしたって、変態確定だ。

だから、その気持ちを見るという行為に代償させて。
俺はこいつの隣に陣取る。



「なあ、名前さ」

急に、こいつの薄い唇が動いた。
喉が動いて少し掠れたような重低音が流れ出す。

「ん?」

「ヨシアキって、秋生まれなの?」

びっ…………くり、した。
こいつ、俺の名前知ってたのかよ。


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「見えない臓器の名前は」
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