「ふん、粗末な部屋だな」
「そうですか」
装飾品の一つや二つ置けないのか、と嫌味を言うラジフを放って、ナジャは椅子に腰を下ろした。小言の多い上官だ。いつまでも構っていられない。
机の上に置いておいた本を手に取る。あぁ、どこまで読んだだろう。
「全く、本当に何も無い部屋だ」
ラジフはちょろちょろと室内を歩き回る。
何も無い、というその言葉通り、部屋には必要なもの以外何も置いていない。非常に殺風景な部屋である。
不自由をしている訳では無いし、ナジャはこのスタイルを崩すつもりはない。上官に何と言われようと。
「……だ…な」
「え?」
文字の海に沈んでいたナジャは、ふと言葉を拾い、恐らくその発信源のラジフを見る。
「あれは嘘だからな、と言ったんだっ!」
「……あれ?」
「だから! お前が、半獣人だ、から、とか」
語尾に続くにつれ声が小さくなっていき、最後は完全に消え入りそうなくらいであった。
「俺は指揮官だからな、半分とはいえ人間は見下さねば部下に示しがつかないだろう。俺は、お前の能力は認めている。……それだけだ、邪魔したなっ! あ、能力だけだからな、能力だけ!」

力強く閉められたドアに、ナジャは瞠目してから苦笑したのだった。



2008.09.28
2010.08.10 再up


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