「あんた、世界救済委員会よね」
「ええ、そうですね」
「なんで世界救済委員会の、しかも獣人のあんたがここに居るのよ」
「どうしてでしょうねぇ、あなたのお連れさんに聞いて下さい」
「キリエぇえ……」
「ひっ!? や、だってさ、怪我してたんだよ? 放っておくなんて出来ないよ、人として」
澄んだ青空。今日も良い天気だなぁ、とナジャは一つだけある窓から外を眺めた。
ここはとある町の宿屋。下に広がる市場からは賑やかな声が聞こえてきて、活気づいている事が分かる。
ちら、と未だに喧嘩のおさまらない世界撲滅委員会を見やり、平和だなぁ、とナジャは思った。
「だからってね、あれは世界救済委員会。私達は世界撲滅委員会。この違い分かる? 救済と、撲滅の違いよ」
「それくらい分かってるよぉ……」
「いーえ、あんたは分かって無いわ。だいたいねぇ……」


「……平和ですねぇ」
「俺はそうとは思わないクマ」
ぽつりと呟いた独り言に、まさか言葉が返ってくるとは思っていなかったナジャは驚き、声の発生源を見た。
「……クマのヌイグルミ……」
「クマって言うなクマ! ……まぁ、とにかく、お前は平和じゃないクマ」
「? 世界救済委員会だからですか?」
「それもあるけど、違うクマ」
ヌイグルミ――トッピーは、びしっ、とナジャを指差した。
「お前の服の下に隠している怪我は穏やかじゃないクマ。キリエが……それに気付いていれば、連れ帰ってきたのも頷けるクマ」
「……かすり傷です」
「嘘も甚だしいクマ」
「これくらい、日常茶飯事なんですよ。まさか気づかれるとは思いませんでした……、出来れば彼等には内緒にしておいて下さい」
キリエは露出していた分の傷(これは本当にかすり傷だ)を見ただけでナジャを宿屋まで連れ帰ってきた。ナジャも、いつもなら断っていた所だが傷が深く、反論する力は残っていなかったのだ。
だがそれも今は高い治癒能力によりいくらか塞がってきた。それでもまだまだ本調子とは言い難いのだが。
「誰にやられたクマ」
「……本当に日常茶飯事なんです、異端の者にとってはね」
トッピーには、微笑むナジャの表情を読み取る事は出来なかった。



2008.08.26
2010.08.10 再up


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