・華氏451度をオマージュ(パクリとも言う)
・「テガミバチ」=「テガミ」という有害な存在を消すための職業という設定
・ラグはテガミを配達する仕事をしている設定。



ゴーシュは目の前にある、自分の背を大きく上回る高さにまで積み上げられた紙の山に火を放った。
紙はよく燃える。小さな火を一枚の紙に近付けるだけで、それは次第に燃え移っていき、最後にはごうごうと音を立てて燃え盛る火柱にまで成長していく。それは綺麗なようでもあり、紙の脆さの証明でもあった。

テガミは有害な伝達手段だ。そう言われて何年経っただろう。

テガミは届けるまでに時間がかかる。それは何て無駄な時間だろうか。
紙に字を書けば、紙を消費することになる。インクも消費することになる。何て効率の悪い伝達手段なのだろうか。
それに、テガミを届けるには町と町を行き来しなくてはならない。このアンバーグラウンドではその行為は死を意味するとさえ言われている。町の外には鎧虫と呼ばれる凶悪な虫が彷徨いており、その虫はテガミに反応して寄ってくるのだ。
ところが現代の技術で作られたコンピュータはどうだろう。電子メールならば町を行き来する必要はない。ぽん、とボタンを押せばすぐにでも相手に言葉を届けることができるのだ。

テガミは、無い方がいいのだ。
テガミなんていう伝達手段がまだ根付いているから、だから、鎧虫にこころを食われた、という被害が絶えない。
テガミは、存在を消すべきだ。消さなくては、ならないのだ。

「…………本当に、いらないのかな」

ゴーシュはテガミを一枚手に取った。
手袋を取り、素手でテガミに触れた。ただの紙に、コンピュータのものとは違う、少し歪んだ字で宛名が書かれている。癖のある字だ。コンピュータで入力してしまえば、こんな現象は絶対にあり得ない。
歪んでいたり、滲んでいたり、よく見なければ字が読めなかったり、字が間違っていたり。

とても馬鹿な伝達手段だと思う。それなのに、何故か、ただの紙が暖かく感じた。温もりが、そこにあるような気がした。

「処分、しなきゃ」


『"テガミバチ"も、昔は手紙を配達する仕事だったらしいのにね』

遠い昔に聞いたその言葉が、ずしりと心の中に重く落ちていった気がした。



2010.12.24 blog


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