何だか最近、ザジがおかしい。
ラグは今、目の前でゴーシュと和やかにお茶をしているザジの事をじっと見詰めた。
ザジとゴーシュは、「あの鎧虫の攻略法って……」「心弾を撃つ時には……」なんていう会話を笑顔で交わしている。物騒な事この上ないが、彼らにとってはそれが一番盛り上がる事の出来る話題なので仕方ないと言えなくもない。
それはトークが下手なゴーシュにとって唯一といえる、饒舌になる事の出来る話題でもある。ゴーシュは普段では考えられないくらいに瞳をきらきらと輝かせ、子供のように語っている。
そんな姿がかわいいなぁ、なんてラグは思う訳だが、今気になるのは大好きなゴーシュよりも、何だかいつもと様子の異なる友人のことなのだ。
ザジはゴーシュと会話している時にはあまり反発したりしない。最初はゴーシュに対する噂やイメージもあってか険悪な雰囲気でもあったのだが、少し触れ合う内にそれは次第に軟化していき、今ではもう仲の良い茶飲み友達にまでなっていたのだ。
そんなザジであったが、最近は、何だか、前よりももっと丸くなったような気がする。
具体的に言えば、言葉の端々が柔らかい。話し方がほわほわとしている。
ゴーシュと前よりも仲良くなっただけでは、と言ってしまえばそれまでなのだが、それでも何か変だ、とラグはあまり明確とは言えない疑問を抱いていた。
「それで、その時鎧虫に10mくらい吹っ飛ばされちゃいましてー」
「えー、ゴーシュさんがですかぁ? 全然想像出来ないですよー」
「いえいえ、ぼくもまだまだ未熟者ということなのですよ」
「えぇー……。あ、俺も昔、脇腹に穴空けられたことあったなぁ」
「わぁ、やっぱりザジもあります? ぼくも右足やられたことあるんですよー」
さらっととんでもない話をする二人に、ラグは心中穏やかではなかった。「何その経験!?」とか「え!? 大丈夫なのそれ!?」とか突っ込みたい気持ちでいっぱいだったが、それを話す二人の表情がとても和やかで、ふにゃふにゃとしていて、そんな気持ちは萎んでいってしまった。
「ゴーシュが、二人いるよー……」
そんな疲れたラグの呟きは、幸か不幸か、誰にも聞かれることはなかった。





ザジが「悪意」をばかすか撃っていたら最終的に「悪意」の無い爽やかなザジが出来上がるんですか? という変な勘違いをした結果生まれたSSS。


2010.12.16 blog


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