「ゴーシュはびじんなのだろう?」
とある日の昼下がり、紅茶を片手に新聞を読んでいたゴーシュの前に現れたのは、いつものようにおでこをキランと光らせた少女、ニッチだった。ニッチの発したあまりにも唐突な問い掛けにゴーシュはたっぷりと固まってからやっとのことで「…………は?」と声を絞り出した。先程まで読んでいた興味深い記事の内容も、この時ばかりはきれいさっぱり吹っ飛んでしまった。口に含んでいた紅茶を吹き出さなかったことだけでも褒めてあげたい。しかしニッチはそれがお気に召さなかったようで、むっとしたように少し眉を吊り上げた。
「ゴーシュはびじんだと聞いた。どうしたらゆたかなチチがなくてもびじんになれるか」
「一体誰がそんなことを……、まぁ、今はいいでしょう。それで、ゆたかなチチ、ですか?」
「うむ。びじんにはゆたかなチチも必要だ。だが、もし。もし! ゆたかなチチが手に入らなかった場合のことを考えて、びじんであり、ゆたかなチチを持たざるゴーシュに聞きに来たのだ」
ふん、と胸を張る少女の体は確かに凹凸が少ないように見える。しかし、それでも綺麗な金の髪や深い海色の瞳、可愛らしくふっくらとした顔立ちを見る限り、ニッチは「びじん」から外れている訳ではなく、むしろ限りなく近くにいるように思われる。
今は美人というよりは「可愛らしい」と言った方がしっくり来るような容姿ではあるが、将来的にはきっと美人に成長するのだろう。ゴーシュは孫を見守るような気持ちで「将来が楽しみだなぁ」と考えながら紅茶を啜った。安物の茶葉を使っているとはいえ、楽しいことを考えながら飲む紅茶の味は絶品であった。
「ゴーシュ、どうしたらびじんになれる。やはりゆたかなチチが必要か?」
「うーん……。ニッチは、どうしてそんなにびじんになりたいのですか?」
「む」
ニッチは改めて何故びじんにこだわるのかを聞かれ、言葉に詰まってしまう。そういえば、何故だったのだろうか、と一瞬だか分からなくなってしまった。
しかしすぐに持ち直し、ぐいっとゴーシュに顔を近付けた。勢いよく顔を近付けたニッチに気圧された風もなく、ゴーシュは微笑みを浮かべたままだ。
「ラグが私をびじんと言った。だから私はびじんでなくてはならないのだ」
「ラグが? ……確かにニッチは可愛くて美人ですから、そう言うのも納得ですね」
ゴーシュのさらりと放った言葉に、ニッチは顔を真っ赤に染めてぷるぷると震えた。しかしゴーシュはそんなニッチに気付くことはなく、言葉を続けた。
「でも、それは、ラグがニッチのことを既に美人だと思っている、ということではないのですか?」
「もっとびじんでなくてはいけないのだ! ラグは世界一だからラグのディンゴも世界一でなくてはいけないのだ! だから、ニッチはもっともっとびじんになる必要がある!」



尻切れトンボで申し訳ない。

2010.03.26 blog


「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -