部屋に着くと、鍵が空いていた。
雨に濡れたコートを玄関でタオルで拭いながら、酒のにおいに顔をしかめると、リビングのドアが開いて中から缶チューハイを持った白髪の男が出てくる。


「あー、ランス、おかえりー」
「おかえりじゃないですよ、人の部屋で飲み散らかして」

「悪い悪い」

悪いと思っていないな。
そんな軽い口ぶりでカリヤはふらふらとリビングにあるソファにどっかりと座り込んだ。

部屋に転がる沢山の缶チューハイの空き缶を拾いながら、真っ赤に腫れているカリヤの目元を見て、ため息をつきながら缶チューハイを取り上げた。


「今日、帰り道に名字名前さんと会いましたよ」

「…あ?ああ、名字さんね」
「言っていた通りの人でしたね」

カリヤは動きを止めたかと思うと、目元を柔らかくはにかませて、笑いを浮かべると、いい子だよね、と溢すように呟く。

カリヤが此方を見てもう一度はにかんだので、応えるように笑いかけて、はい、と返事をした。

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テーマ「推しとの恋」
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