プロローグ



いつも通りの日々は突然色づいた


放課後、体育館脇の日陰で昨日と同じように念入りに準備体操をする
準備体操なんかめんどくせえなんてこと言う奴もいるけどそういう奴らは1度腱でも筋でもヤっちゃえばいいのに、と思っている俺なわけだが、そんなことはさておき段々と体もあったまってきた。
そろそろ軽く走り込みして今日こそフォームのチェックだなと、廃部寸前の陸上部に所属している俺はまだ来ない先輩たちを望み薄に待ちつつ学校をぐるっと回るために走り出した

そういえば校舎裏のプールの方は最近まで壁の塗り替えで通れなかったけど、終わったって先生が言ってたような気がする
せっかくだからそっちまで行こうと嬉々として走って行く、プールが見えてきた所で何だか険悪な雰囲気の声が聞こえてきた



「…な?いいだろ?」
「俺、恋愛とかそういうの興味ないんで。」
「じゃ、じゃあ…き、キスだけでいいから!」


これが男女の会話だったら俺は間違いなくUターンして速攻聞かなかった事にして退散するが、なんとまあこれが男同士の会話なのだ。しかも迫っている相手は興奮気味だ

「キスだけでいいっ!?ふ、ふざけてるんですか!?」

告白されてしまったらしい可哀想な男子がひどく動揺している
そんな奴の相手なんてしてないでさっさと違う所に行けばいいものの、動揺しすぎてなのか動かない
するとそれを見抜いたのか相手の男はガッと腕を掴むと急激に顔を近づけ迫る


「わっ!やめ、くそ…やめろっ…!」
「おいっ!なにしてんだよ!!」

まずいと思うより早く走り出していた
突然出てきた俺にびっくりした奴は慌ててその場から逃げ出す

「あっ、逃げんな!!」

逃げた奴なんて簡単に捕まえられたが、迫られてた彼がへなへなとその場に座り込んでしまったから奴はほっといて俺は彼にそっと近づいた

「あー…大丈夫か?」
「へ、いき…なんでもない。」
「どう見ても平気じゃなかったよな?」
「あなたには…関係ない。部活、サボってていいんですか?」

きっ、と睨んでくる目が俺を貫く
こんなつんけんどんな態度とるやつによくあいつは告白したな…なんて余計なこと考えたりもしたが、彼の手が若干震えているのを見逃さなかった俺を褒めてほしいくらいだ
仕方ないよな、あんな事があった訳だし落ち着くまでは居てやろう

「見かけちゃったから俺にも関係あるし…部活は今自主練習の時間だからへーき。」

にっと笑ってやればさっきよりだいぶ顔色も良くなってきた
そこでようやく俺は気が付いた、確かこいつ同じ学年の…


「…お前、たちばな…だよな?図書室によくいる」

ぱちくりと瞬きする、どうやら当たりらしい
すぐに顔を逸らされて橘はズボンに付いた土をハンカチで払った

「…巻き込んですいませんでした、今日の事は忘れてください。じゃあ」
「あ、ちょ」

たたた、と走り去る彼に一人取り残される形になってしまう
どうしたもんかと思ったがこのままランニングを続けて校舎を回り込めば幸い体育館と図書館は渡り廊下を繋いですぐの所にある
きっとこれから図書館に行くんじゃないだろうかとなんとなく予想はできたから俺はふたたびランニングにシフトチェンジし走り出す

さっきよりもスピードが上がってるなんて気が付かずに。





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