この生き方を選んだのは、間違いなく私だった。

◇フィレンツェ・ボンゴレ編(1年目・夏〜2年目・秋)

 アダルベルトから両親の形見であるマスケット銃を受け取るエルザ。さらに、シエナ別邸やアダルベルトの資産の1割を引き継ぐことになり、彼女の人生は変わり始める。独立したカヴィリェーラの統領であり、アダルベルトの後任者としてメロイ家の家長ともなるベルナルドはボンゴレの傘下で協力関係を結ぶ。アダルベルトのツテでサンソーネとの交渉の席も正式に設けられ、チェラーゾの脅威もカヴィリェーラとの協定で消滅した。自警団ボンゴレの二大案件は終結し、同時に、新たな戦力も得る大きな機会であった。エルザを新しい仲間に迎え入れ、ジョットたちは本部に戻るのであった。

 ボンゴレ総本部でのエルザの新しい生活が始まる。浅利雨月、D・スペードとの出会い。エルザはナックルの補佐として、地域住民に寄り添ったボンゴレの慈善活動を任されるようになる。ボンゴレの男達に囲まれながらも、肩を並べることができるタフさと酒の強さで彼女は組織に受け入れられていく。長年抱えてきたしがらみからも解き放たれ、明るさも、自分の意思も取り戻していった。彼女がみたボンゴレの活動は、本当にただの自警団のようだった。ナポリでの出来事が、特別すぎたのかもしれない。自警団にやってくる小さな事件を解決しながら、仲間の絆は深まっていく。


・ボンゴレ式誕生日会(ボンゴリアン・バースデー・パーティー)
 1月1日。歳末からお祭り騒ぎが続くボンゴレファミリーにとって、最もボルテージの上がる日が来た。ジョット23歳(奇数年)の誕生日を迎え、特別な誕生日会を執り行うという。
事の始まりは自警団ボンゴレが形になる前。当時、ジョットがGの17歳の誕生日を町の人たち総出で祝ったことに由来する。年上の女性に失恋したGを誰が一番励ますことができるか(喜ばすことができるか)で競い合ったのだ。審査員は祝われる本人。毎年やるのは骨が折れるということで、二年おきに、いつのまにか奇数年を祝うようになった。ボンゴレが結成されてからも取り入れられた恒例行事である。奇想天外なプレゼントを贈る者、歌を贈る者、体を張った芸も披露する者。あるいは、難航していた事案の解決の知らせを持ってくる者。ジョットの誕生日をどう祝おうか考えていたエルザも一層はりきるものの、歳末の忙しさでプレゼントも用意できていなければ、一芸披露も順番が後になるほど不利である。年明けから丸1日続くパーティーで、誰もが気分が舞い上がっていた。ついに順番が回ってきたエルザは、Gに背中を押され(け飛ばされ)、ファミリーの面前でジョットにキスを贈る。ジョットもまたそれに熱く応えるのだった。湧き上がる冷やかしと拍手と歓声。新年早々、ボンゴレファミリーには地方支部にまでめでたい知らせが行き届いた。


・晩餐会においてキャバッローネと
 春も待ち遠しい3月。エレナ嬢の父が主催する晩餐会に、ジョットとエルザ、エレナ嬢の婚約者であるデイモンの三名が参加していた。多くの若手起業家たちが、エレナの父や晩餐会に集まる貴族から資金的な支援を受けるための席だった。自警団ボンゴレも『若手企業』のなかの一つとして参加している。エルザは『ドン・ボンゴレの恋人』として、ジョットと腕を組んで歩く。しかし、ジョットがエレナの父に呼び出されて席を外す間、エルザをダンスホールに誘い出そうとする男がいた。
その男は賭けにでていた。ダンスに誘い出す相手が、自分が探していた女性その人であるか、他人の空似か。その男は賭けで自らに勝利した。一種の失望と同時に、喜びを表情に浮かべて、エルザの腕を掴んで離さない。エルザは驚きながらも、その男に笑顔を向けた。「エンツィオ」エルザがそう呼ぶ男を、しかしジョットもまたよく知っていた。
 その男の名はエンツォ・キャバッローネ。北イタリアで発足したキャバッローネファミリーの若き首領である。ボンゴレとは影響力のある地域が隣接していて、両ファミリーの間柄は良好なものではなかった。『跳ね馬』と呼ばれるだけあって、よく言えば情熱的、悪く言えば血の気が多いキャバッローネ。エンツォは人情味にあふれて部下からの信頼も厚い男であったが、同じく若き首領のジョットには対抗心を燃やしていた。
 エンツォとエルザが出会ったのは3年前。当時シエナで生活していたエルザとはお互いの素性もよくわからないまま、友達以上恋人未満の関係であった。エルザが故郷に帰る直前、靴とプロポーズの言葉を贈ったのは彼だった。
 思いがけない再会を果たしたところで、エンツォはプロポーズを断られたことを嘆く。また、以前メロイ家のアダルベルトを介して上がっていたエルザとの縁談も、アダルベルトの引退によって破談になったことも明らかにする。縁談はエルザにとって初耳だったが、当時一家の強大化を企んでいたアダルベルトがキャバッローネとの提携で勢いを付けようとしていたのなら腑に落ちる。アダルベルトにとっての"自分の利用価値"が、思いがけないところで明らかになった。
 思い出話に花が咲くエンツォとエルザ。しかしジョットは、争ってこそいないものの友好的ではないキャバッローネの首領と、自分の恋人が親しいことを、男として面白く思わない。わだかまりを抱えたまま、その晩餐会はお開きとなった。
 それから数週間後。ボンゴレとキャバッローネの勢力境界線付近で、第三勢力が暴動を起こす。現場に最も近いところで仕事があったエルザがすぐに駆け付けた。第三勢力とボンゴレとキャバッローネの三つ巴合戦が始まりかねない状況で、エルザはボンゴレ側からキャバッローネの男達に共闘を求める。だが、「女である」という理由で抗争の場ではキャバッローネはおろか、ボンゴレの仲間たちすらエルザの意見を跳ね除けた。キャバッローネ側では、すでに第三勢力との銃撃戦が始まる。住民が巻き込まれかけたところを、エルザは銃をもって抑止する。彼女にとってそれが初めて銃で傷付き、傷付けられる場面だった。キャバッローネの男は身を張って住民を守ったエルザの心意気を買い、ボンゴレとの共闘を受け入れる。これにより、抗争地域と被害が拡大する前に事態は終結。戦った両ファミリーの男達は祝杯を挙げた。もともと、人々のためにという信念が一致していた両ファミリーはこの繋がりから、やがて兄弟ファミリーと言われるほどの仲を築いていくようになる。
 一方、ボンゴレの内部でも、エルザのことを性別や立場を理由に突き放す者も徐々に減っていくのであった。


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