2018クリスマス前


「あー寒い、ほんとーに寒い、まじで寒い」
「うるせぇよ、黙って手を動かせ」
「酷いなぁ、そもそもエアコン壊したの誰よ?」
「俺じゃない」

じとりと睨みつける岩村の視線から逃れるようパソコンに顔を近づける。ちなみにエアコンを壊したのは本当に俺ではない、犯人は雅宗だ。
雅宗と約束をしていた休みの日、ちょっとした用があって雅宗を連れて生徒会室に立ち寄った際、外の寒さと同じくらい冷えた室内に凍えながらもエアコンを付けようとした。がリモコンが見つからなかった。
どうせ戸際か岩村だろう、あいつらリモコンはいつもの場所に戻せと言っているのに…ぶつくさ文句を言う俺を差し置いて、直接スイッチ押せばつくだろ。というノリで雅宗は椅子の上に乗ってエアコンをいじり始めた。
今思えばリモコンなんて少し探せば見つかるんだからもう少し頑張ればよかったのに。
スイッチを押してもうまく作動しなかったエアコンをどんどんと叩き始めた雅宗に、もういいから。と辞めさせた数分後、ソファの隙間から出てきたリモコンのボタンを押してもうんともすんとも言わなかったのには流石に顔が青くなった。電池を変えてみてもダメ、もう一度直接スイッチを押してみてもダメ。これは完全に壊れてます、そう笑う雅宗の頭を一発殴ったのはつい三日前の出来事だった。

現在寒さに耐えながら冬季休暇…つまり冬休み中の部活動、委員会活動の申請書をまとめているわけだがどうにも作業が進まない。冷えて悴む指先に舌を打つ、この寒さでは作業どころじゃない、こんなではどれだけ時間をかけても終わらないだろう。

「やめだやめ、帰るぞ」
「いよっしゃー!あったかい部屋に帰ろうそうしよう」
「おい岩村、エアコンはいつになったら治るんだ」

浮き足立ち上機嫌で帰る準備をしていく岩村に訊ねる。岩村は体の動きを止めて考えるそぶりを見せてから壊れたエアコンを見上げた。

「わっかんない、なる早でとは言ってあるけど」
「これまじで早く治らないときついな…」
「まだ冬休みまで1ヶ月あるし大丈夫しょ。それよりさクリスマス何する?どっかいく?」

クリスマス。その単語にそういえばそんな時期かと壁にかかったカレンダーに視線を移した。

「クリスマス?ああ、てかなんで一緒に過ごす前提なんだよ」
「なんでって、なんで?!俺たち捨てて他の奴らとクリパすんの?!」
「ヒステリックやめろ。別にそんな約束してねーよ」

なら決まりだね、と相変わらずの調子で言う岩村にふと考える。俺たち、ということはどういう事だろう。生徒会のメンバーか、もしくは…

「呼ぶのは加賀谷だよな?」
「うん、あいつのプレゼントのチョイス面白いから楽しみだな」

楽しそうに笑う岩村に確かになと頷く、男子高校生が3人揃ってクリスマスとはなんとも言い難いが、まあ悪くない。来年はどうなるかわからないのだ、高校生活最後のクリスマスくらいぱーっと騒ぎたい。
あれやこれやとクリスマスの案を出していく岩村に相槌を打ちながらもう一度カレンダーに目を向ける。クリスマスが終われば年末年始、そこでもまた何かしら3人でやることになるのだろう。でも今はとりあえず、12月24日だ。いや25日か?まあどちらでもいいか。

「もちろん二日だよね!」
「ああ…は?二日?やるのか?」
「ええっ!あったりまえじゃん!クリスマスだよ?高校生最後の」

ケーキ食べて、ゲームして、お酒も飲もう!声を高らかにそう言う岩村の頭を、声がでかいと叩く。岩村は反省した様子も見えずにあれと、これと。と楽しそうに笑っていた。
影也にサンタコスさせようという案につい俺も笑ってしまう。岩村は勿論女の子の格好だと追い討ちをかけた。

「楽しみだねクリスマス!」
「ああ、そうだな」

その日までにエアコンが無事に治って仕事もはかどって、全てが片付いていればいいんだけれど。
勝手にカレンダーに赤い丸をつける岩村に、1ヶ月後のクリスマスが待ち遠しく感じた。




prevnext

back

×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -