女王さまと白雪姫


*白雪姫パロ
*清原×滝真



今更なにを、というかもしれない。
今まで散々もてはやされ、世界で一番美しいとまで言われてきた。その俺を慕う声や眼差しの中で誰にも理解されることのない孤独に苛まされながら、俺は頂点に君臨し続けたのだ。
それを変わることのない、永遠のものと信じて疑わないままに。


「この世で一番美しいのは、」

窓の外をぼんやりと眺めながらぽつりと声を溢す。
自分のものとは思えないほどにがらがらのかすれた汚い声だった。

「・・・」

森の動物たちに囲まれながら、真ん中で笑うあいつ。幸せそうに楽しそうに笑う。
あんなに綺麗に、俺は笑うことができるだろうか。答えは、否である。もう疲れてしまった。彼のように、白雪のように城の外で自由な時間を過ごせたら。あの場所へ手を伸ばして届くのならば。

「羨ましいだなんて。」

全てを手に入れてきた。
でも、いつしか大切なものが、本当にほしかったものがわからなくなってしまっていて。気が付けば俺の周りには空っぽなものばかりが集まっていて。
そして、最後にはすべてをなくしてしまっていて。

「らしくないですね」

「らしくない、か。…俺は、一体、」

「はは。ではそんな女王様には、俺からこんなプレゼントをしましょう」

これを白雪姫に。きっと女王様の周りに幸せが。
側近はそう言って笑う。
彼の手には真っ赤なリンゴが一つ。窓の外で楽しそうに笑う彼に手が震えた。

「ああ、」

外で笑う白雪のもとへ一人の男が近寄っていく。よく見知った人物である。
彼と、白雪は幸せそうに微笑む。一人ぼっちの俺を残して。
受け取ったリンゴに鼻をくっつけて、ああそうか。もう俺は違うんだ。それでは白雪姫に国の女王からプレゼントを致すとしようじゃないか。酷く甘い匂いに心臓が奪われそうだった。




『この世で一番きれいなのは誰だ?』

『女王様、俺は何でも知っています。隠すつもりもありません。この世で一番きれいなのは、会野巡流です』

『会野…白雪のことか』

『時期に世界は女王様に牙をむくでしょう。』

『世界が俺に、牙をむく』

『あなたは心を壊す。あなたは世界で独りぼっちだ』

『お前はだれだ』

『俺はあなたの唯一の側近、清原聖希です』

『・・・おれは、だれだ』

『あなたは世界でいちばん美しかった、浅葱滝真だ』



END




prevnext

back

×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -