年越しその2


「清原、」

『あ、会長?ごめんごめん口滑っちゃってさあ・・・ん?ちょっと待ってね会長。え、なになに?・・・うん、いよいよ!ほら会長待ってる』

「おい、馬鹿お前なにいって・・・」

『―ブッ、年末まで委員長にちょっかいかけにきたのかよクソ野郎!!!これ以上迷惑かけんなブッス!!』

ブス、って。お前、それが自分の言うのもなんだがランキング一位の俺に言うセリフか。
耳がキンとなるほど大きな声が電話を通して響く。
叫ぶ植木の後ろからはケラケラと暢気に笑う声が聞こえてくるのに青筋を立てた。ふざけんな、清原。

「植木、一回落着け―」

『うっせえな、落ち着いてる』

どこが落ち着いているというのか。
年末までこう喧嘩をふっかけられていてはやっていられない。
俺が相手では、植木は威嚇し喧嘩腰のままだろうし。どうしたものか、と周りを見渡せば・・・そうだ。こいつがいるではないか。
こちらをチラリともせず、眠そうに雑誌を捲る岩村の姿にこいつを使わない手はない、と電話から耳を離した。

「岩村」

「ん?なに?」

「悪い、やっかいな奴につかまった」

パス。そう一言言って、電話を持ち主へ返すために差し出す。
怪訝な顔をする岩村は面倒だなぁ、と1人ボヤくと受け取った電話を耳に押し当てた。

「もしもし?かわったけど」

非常に面倒そうだ。
うん、だとかああ、だとか適当に相槌を打つ岩村の姿を眺めながら、やっぱり植木が俺を嫌うのは俺がいけないのだろうかと心の中で考える。
だって、待ってくれ。俺がいつ何をしたというんだ。確か植木は中学から転入してきた、と聞いているし実質初めて会話を交わしたのは高校に上がってからだ。
俺が2年、加賀谷も2年、植木が1年。加賀谷にくっ付く植木に自己紹介をした途端顔を真っ青に染めて・・・―

「ちょっと、滝真」

「・・・え?あ、悪い。考え事してた」

「周り見えなくなるくらい考え事に没頭しちゃう癖改めたら?はい、これ2014年の抱負ね」

勝手に決めるな。と言おうと思ったけれど、既に通話は終わっているようで携帯がソファの上に転がっているのに気が付いてしまった以上余計な反論もできない。
周りが見えなくなってしまうことは事実なのだ。・・・ポジティブに考えよう。集中力が驚くほど高いんだ俺は。

「ああ、」

「ん?」

「すみませんってさ、空くん」

何でもないようにポロっと言う岩村にうそだろ、と突っ込みたくなる。
仮に謝っていたとしても確実にそれは俺に対してではなくお前に対してだ。

「あと、影也くるってよ」

「まじか」

余計な植木が入ったせいでなんのために電話したのか忘れていたが、そうだった。加賀谷を誘うためだったか。
・・・来れるのか、あいつ。





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