初等部のお話その5






「?何ニヤついてるの、会長」

生徒会室にかかっている銀縁の、恐らくかなり値の張るであろう大きな壁掛け式の時計を見つめ、俺は机の上に広げていた書類を一つの山にまとめた。
新しく完成した書類を俺の机の上に置いて不思議そうに首をかしげるのは会計である岩村で。
俺はふ、っと口元を更に緩めた。


「いや。お前も随分初等部の頃から変わったと思ってな」

「何ソレ嫌味?」

確かに変わったって自覚してるけどー。
そう間延びのする返事を返すと岩村はジっと俺を見つめた。

「?何だよ」

「いや?会長・・・滝真は、何も変わってねえなって」

悪戯っぽく笑う岩村に小学生の頃の岩村が重なる。
今、名前で呼んだのも口調を変えたのも、全ておふざけなのだろう。
本当、変わった。
この、長いようで短い間に。


「お前がまさかこんなに男を食い散らかすようになるとは思わなかった」

「そう?でも俺はお前が生徒会長になると思ってたけどね」


お互い軽口を叩きあいながら笑いあう。
そんな時、生徒会室の扉がノック

「失礼する。浅葱、約束の時間だが」

2回ほどノックして生徒会室へと足を踏み入れてきたのは風紀委員長の加賀谷影也だった。
その手には一枚のCDがあることを確認し、こちらへと歩いてくる姿をただ眺める。

「悪いな、パシリみたいに使っちまって。そこのソファにでも腰掛けておいてくれ。
岩村、悪いが席を外してくれるか?」

「了解しましたー。と、それじゃあ何かあったらよんでくださいねー」

そう言って入れ替わるように加賀谷とすれ違い、出て行った岩村の後姿を眺めるもすぐに扉は閉められてしまった。
俺は加賀谷へと視線を移すと、加賀谷が腰掛けているソファの向かい側へと腰を下ろした。
そして切り出す、仕事の話。

「早速だが。次の体育祭の件について風紀は――。」

本当、変わったもんだ。
あの頃の俺らは、もっと違う未来を描いていたのにな。



END




「変わらないのは・・・あんただけだっつうの。」

俺も、アイツも変わった。
変わってないのは自分だけだってアンタはいつ気がつく?なあ、滝真。




「俺、浅葱滝真。お前の・・・名前は?」

「俺の名前は加賀谷影也」




「ちょー、おーい!置いてくなよっ、俺も行くっつうの!!」

「2番・・・?なんで追って来て・・・」

「・・・何だ、2番って」

「いわむら!いい加減覚えてよ!てか転入生血やばいよ血」

「「・・・あ。」」




ほんとのおわり




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