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「・・・携帯にも出ない、と」

休み時間。生徒会室を覗きに行こうと一人廊下を歩いていく。
朝から教室へ来ない、携帯にも出ない北条が、もしかしたら生徒会室で仕事をしているかもしれないと踏んだわけだったが。

「お、滝真! ちょっと手伝えよ」

 両手いっぱいに荷物や書類を持った男が前から歩いて来たかと思うと、無遠慮にそういった。なんだこの不躾なやつはと不審に思っていると、男は荷物の合間から顔を覗かせた。無遠慮で不躾な男は雅宗だった。
 この男が学校に貢献するようなことがあるだなんて、明日には雪でも振るのだろうか。と雅宗が「よいしょ」と荷物を持ち直す様子に首を傾げる。

「……珍しいこともあるんだな」

「失礼だな」

 担任に捕まって、最悪。雅宗はけらけらと笑いながらほらこれ。と重たそうな段ボールを差し出してきた。は? 不服そうな声が思わず漏れてしまう。俺たちトモダチだろ?そんな恐喝みたいなセリフを雅宗はいとも簡単に吐き出す。

「すぐそこだからさ、ちょっと付き合えって」

「お前と違って暇じゃない」

「ほら、つべこべ言わず行くぞ!」

 さっき物理でさ、忙しいって言ってもあの教師なんも聞いてねえの。萎えた顔でそうぼやく雅宗に相槌を打つ。確かクラスFの担任は物理の教師だったか。確かにあの先生なら雅宗くらいとっ捕まえて雑用押し付けそうだ。
 雅宗と並んで歩きながら考える。にしても、重い。

「あ、ここ、物理準備室ね」

 物理準備室の扉を開ける雅宗に続いていく。薄暗くて埃っぽい。何年も放置されたような実験用具や重なった教科書や参考書。全体的にじめっとした空気の教室内に顔をしかめた。

「いやー助かった。ありがとな」

「ああ、本当な」

 じゃ、俺行くぞ。適当な場所へ段ボールを置いて雅宗に背を向けて教室を出て行こうとすると、雅宗は咄嗟に俺の腕を掴んだ。なんだよ、と雅宗を伺うとそれは悪い笑みを浮かべていて、嫌な予感に目を泳がせる。

「もう行くの?」

「そりゃあ、まあ」

「1時間ここでサボろうぜ、誰もこねーよ」

 悪びれずに言って、教室の扉を掛ける雅宗の動向を目で追う。こいつは隙あらばサボるから、よくない。


「そういやさ、東葉の奴から聞いたんだけど交換学校ってまじ?」

「ああ、まあ確かに話は出ているけど、まあないだろ普通に」

「だよなー交換だもんなー」

 でも面白そうだよな。笑いながらタバコを取り出す雅宗に、曖昧に頷いて窓の外に目を向けた。雅宗も面白そうとか思うんだ。少し意外に思いながら、遠くの方で鳴る授業開始を知らせる予鈴の音を聞いていた。

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