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その日は快晴だった。
せっかく用意した布団からはみ出し、もはや地べたで眠る晴を叩き起こして共に朝食を取って二人並んで登校する。
どこまでも広がっていくような青空に、朝らしい静かなざわめき。生徒たちの笑い声が実に心地よい。

「んーいい天気。快晴だねぇ。そういえば昔はよく、こうやって行ってたよな」

「ん?あ、おい」

悪戯を思いついた子供のように笑う晴は俺の空いていた手を取って前を歩いていく。
繋がった手のひらは確かに懐かしさを感じさせた。最後に手をつないだのは小学生の頃だったか。まだ俺が星渦学園に編入する前、毎朝一緒に登校をしていたあの頃を思い出す。

「もう子供じゃないんだから、手をつなぐのはやめろ」

「ええ、ダメ?」

「ダメ」

「どうしても?」

「ダメ」

「なーんて、ダメでも離さないからいいよ!」

声を出して笑う晴にお前は、と息を吐く。図体はデカくなっても中身はあの頃と何にも変わっていないように思える。しかし放っておくことはできないのだ。晴自身が何も変わっていなくても、周りが変わってしまった。現に今この状況でさえ周りの視線がチクチクと刺さるのだから。
誰かと一緒に歩いているだけでも視線を集めるのに、手をつなぐだなんて由々しき事態に違いない。それが例え兄弟だろうと関係ない。
ブンブンと小学生のように繋いだままの手を振り回す晴にいい加減にしろ、と叱ろうとした時だった。
丁度通りすがった校舎脇の非常階段の奥。生徒の姿が目に入る。3人。何かもめているようだった。

「晴、悪いけど先に行ってろ」

「なんかあったの?」

「もめ事かもしれない。一般生徒のお前は、」

「あ。あれ?俺もいくよ」

楽しそうに笑う晴は俺の手をパ、っと離した。瞬間離れていく熱にあっけにとられて目を丸める。あの頃の晴は臆病で、人見知りで、俺の手を決して離そうとしなかったのに。
何も変わらないわけがないのに。あれから一体何年経ったと思っているのか、成長しないはずがないんだ。


「おーい、喧嘩はやめなさーい!」

「・・・あ、っバカか」

一人で突っ込んでいってしまった晴を慌てて追いかけていく。
今まで気にならなかったのに伸びた背丈のせいか、晴の後ろ姿はまるで知らない男のように思えてならなかった。


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