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「ごっめーん遅くなっちゃった!待ったよね?」

扉を蹴破る勢いで部屋に入ってきたのは、生徒会の会計役員である岩村流生(いわむら りゅうき)だった。息一つ乱さず、しかも到底申し訳ないとは思っていないその無邪気な笑顔に、ここまで来ると逆に潔いなと思う。

しかしそれとは別に、登場した岩村の姿に眉を顰める事になる。
岩村は普段から制服を着崩しているけれど(本人曰くおしゃれらしい)、今日のそれは到底着崩しとは言えない範囲の乱れ方だった。ネクタイと上着はどこへやったのか、シャツのボタンは3つは開いていてインナーも着ていないせいか素肌が丸見えである。挙げ句の果てには服の裾もズボンに仕舞われることなくそのまま出しっぱなしになっている。
お前は小学生男児かと怒鳴りつけたいのをぐっと堪えて、隣で岩村の様子をあらまあ、と奇異な者を遠巻きに眺めるようにしている北条に、こいつをどうにかしてくれと岩村を顎で指した。

「岩村くん、不純異性交遊ですか?」

「この場合不純同性交遊かな、まあ交流会だと思ってくれればいいよ」

俺の視線を受けて素直に岩村にそう問う北条もどうかと思うが問題はやはり岩村だ。
つーかこの学園の異性とか国語教諭のおばちゃんくらいだしねーよ、だははと品のかけらもなく笑い声を上げる岩村に場が凍り付くが、本人はそんなこともお構いなしで乱れていた制服を直している。
しかし流石にまずいと思ったのだろうか、ボタンを閉めながらも一瞬考える素振りを見せると「いやでもクラスBのあいつ、抜いてもらったとか言ってたな、まじなんかな…」なんてぶつぶつ呟く。少しでも自分の言動を後悔し反省したのかと思った俺が馬鹿だった。

そのクラスBのあいつが誰なのか、そしてその噂が真実なのかが気にならないわけでもなかったが、岩村に聞くのはなんとも躊躇われたので、その話は忘れることにする。黙って手元の書類を岩村に向けて差し出した。

「設営委員から連絡あったって言ってただろ。多分この件だ」

「あ、うん。そういえばそんな話もしてたね。行ってみよっか、体育館。トラブルあったんでしょ?どうなってるかも確認しなきゃだし」

「ああ、そうだな。北条、お前は続けて書類仕事頼めるか?」

「わかりました。では現場の方はよろしくお願いします」

「ああ、ほどほどで今日は終わりにしていいから。岩村、行くぞ」

「副会長おつかれ−、また明日ねー」

元々今日は授業はなく、HRのみ。午前で帰宅となる。学校に残って仕事をすることも可能だが休めるのであれば誰だって休みたいだろう。
今日、北条は机仕事だけではなく朝から案内もしているし、もとより早々に切り上げて帰らせるつもりだった。
俺の台詞にうなずき、手を振る岩村に手を振り返す北条。その姿を確認して、岩村とともに生徒会室を後にした。

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