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「!!」


立て付けが悪くなっている扉を勢いに任せて開き、室内に足を踏み入れる。

教室自体が普段から使用されることもなく窓も締め切られているせいか、カビと埃の匂いが部屋に充満していてその篭ったひどい臭いについ顔をしかめた。

「動くな、生徒会だ」


教室の半分ほどの広さ。大きめの机が2つ端の方へ寄せられていて、教室の端にはどこから運び出してきたのか、体育などで使うマットが二つ不自然に立てかけられている。
その仕様用途は決して運動の為ではない、まさに現在床に敷かれていて、寝床の代わり、そのものだろう。


俺の登場に目を丸めてフリーズする生徒3名へ視線を移し、彼らの様子に眉間に皺を寄せた。


「お前たち、こんなところで何をやってる?」


敷かれたマットの上で二人がかりで一人を押さえつけあまつさえ口を抑え込んでいるその体勢は、彼らの答えを聞くまでもなく強姦一歩手前なのは明らかだろう。


慌てて押さえつけていた生徒から手を離して後ずさりをする派手髪の二人と、目に涙を浮かべて今にも泣きだしてしまいそうな顔をする生徒の様子に、加害側と見られる二人の生徒を強く睨み付けた。

「学年クラス番号、名前を言え。未遂だろうとこれは立派な犯罪だ、犯罪者はうちの学園にはいらねえ。覚悟しておけ」

「てめぇ……それどういう事だよ、ああ?」

「そのまんまの意味だが。わかりにくかったか?お前たちは悪ければ退学ということだ」


血の気が失せ青い顔をしていた金髪の男が俺の言葉に、次第に怒りに顔を赤く染めていく。

青い顔のまま大人しく自分の未来に絶望していればいいものを。
激昂し次から次へと暴言を吐く男の様子に、面倒になりそうだと顔を顰めた。

しかしそういえば、どこか見覚えがある顔だな。
青筋を立て拳を握るその男の姿に何か懐かしいものを感じて、ふと思い出す。

そうだ。彼は2年前、俺と同じクラスFだった男だ。

名前は覚えていないが、そもそもクラスF自体がどうしようもない奴らの寄せ集めみたいな学級だ。
よっぽどのことがない限りFから上に上がることなど出来ないのが実態だし、そもそもこんなこんな所で犯罪を犯そうとしている時点でもう救いようなど無いに等しい。

ゆっくり男たちの元へ向かっていく。
まるで追い詰められた獣が牙を剥くように、男は目を充血させて、このやろう!と拳を振りかぶった。

「うるせえ。吠えるな」

拳を往なして足払いをかける。
すると面白いくらいに床へすっ転ぶ金髪男に、お前喧嘩弱いだろ。と鼻で笑ってやる。

男は悔しそうにもう一度大きく吠えると膝をついて体勢を立て直そうとするが、その動きを黙って手で制した。


「辞めておけ、今ならまだ言い訳が聞けるがこれ以上反抗されたら警察沙汰にしなければならなくなる」

「っ、ちくしょう!!」

まあ、今の時点でも十分に警察沙汰になり得る案件だが、そう思ってもわざわざ口にはしない。
男はよっぽど警察沙汰にされるのが嫌だったのか、あんなに激昂していたのに今では大人しく抵抗することを諦め、ただ行き場をなくした拳を強く床へと叩きつけた。

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