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「もしもし、北条か?悪い。あの馬鹿、到着したのが正門じゃなくて裏門だったらしく……あ?もじゃもじゃが門の上に?朝っぱらからわけわかんねーことを言うな。
とにかく、裏門じゃ今正門にいるお前が迎え行くには遠すぎる。あの馬鹿は俺がこのまま迎え行くからそっちの……あーわかったわかった。
わかったから、その大変そうな猿を頼んだぞ。話は後で聞くから。とりあえず理事長室で落ち合おう。頼んだぞ」


電話口の向こう側から何やら争う声が聞こえてくるが気にせずに通話を切った。

あいつが転入生といえど、人前で声を荒げるなんて珍しいこともあるもんだな。余程の奴が転入してきたとみえる。


北条千里(ほうじょう せんり)は眉目秀麗であり成績優秀。
常に微笑みを浮かべ、全ての事柄に寛容であり、しかし時に厳しく、我が学園高等部生徒会を支えてきた。
生徒達から絶大なる人気と支持率を得る、麗しの君と呼ばれるような淑やかな男である。表面上、は。


ぽこん、ぽこんと携帯が通知音を鳴らす。
通話が切れたばかりの携帯のディスプレイに表示されるメッセージが、一つ二つと止めどなく増えて行く。


勿論このタイミングで送ってくるのは北条しかいない。
わざわざ読まなくたって大体予想できる。呪いの言葉や殺害予告がどうせそこには書かれているのだ、見るだけ無駄だろう。


通知が鳴り止まない携帯をオフにしてポケットへ突っ込んだ。

つまりこういう奴なのだ。お淑やか、なんて偶像に過ぎないということがよくわかるだろう。
……まあわからなくたっていい、世界には知らない方が幸せなこともあるだろうし。


「あっ、みて!生徒会長だ!」

「本当だ、今日も素敵…抱いてくれないかなぁ」

そう、知らないことの方が幸せなことなんて世の中にはいくらでもあるのだ。
朝っぱらから勘弁してくれ。もはやセクハラだぞ。

息を吸い込んで、そのまま深くまで息を吐き出した。



俺の名前は浅葱 滝真(あさぎ そうま)。
この学園の高等部生徒会長であり、そして学園高等部の頂点に立つ男である。


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