dream
懐かしい夢を見た。
目の前の小さな少年の瞳からは、ぽろぽろと大粒の涙が止めどなく溢れ落ちる。
どうしたんだ。
誰かに虐められたのか?
それともどこか痛いのか?
一体何があったんだ。
目の前の少年に問いかける、焦りを含んだ声は俺のものだ。
少年は俯くことも、止まらない涙を拭うこともなく、俺の姿を見据えるように立ち尽くすと、ゆっくり俺を指さす。
瞬き一つしない少年の瞳から止めどなく落ちていく涙に目が奪われるようで、どうしても、その瞳から目を離すことが出来なかった。
『好きなんだ』
『どうしようもないくらい、好きなんだ』
嘘偽りのない言葉が、胸を締め付けた。
こんな小さな少年が口にするには重すぎる愛の言葉。
これは夢か現実か。目の前の少年は一体、何者だというのか。
「……お前……誰だ」
「……。」
「……はる?」
少年は俺の問いかけに答えない。少年の涙は止まらない。
「……違う、晴じゃない。お前は――…俺、?」
声が震えた。
少年は小さく笑って、そうして光の波に飲み込まれて、消えた。
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