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窓から差し込む朝の光で、目が覚めた。

眠たい目を擦りながら居間へ向かうと、片付いた机の上に置かれた一枚の手紙に気がつく。
昨日眠る前にはなかった。母からだろうか、もしかしてわざわざ休憩中に家に帰ってきた?
訝しく思いながらも紙を手にとって、文字を目で追っていく。


《巡流へ
急な夜勤が入ってしまって、お見送りできなくてごめんね。新しい学校でもたくさんお友達を作って、たくさん勉強をして下さい。応援しています。
夏にはちゃんと帰ってきてね。母さんより》


ああ、これは紛れもなく母の字だ。

俺がこれから転校する先の学校は全寮制の男子校だ。
せっかく叔父さんがくれたチャンスなのだから、不意にするわけにはいかない。
これからしばらくは母さんの顔も見れなくなるのかと思うと、少し物悲しくも思うけれど、でもやれるだけのことをやろう。

母からの手紙を机の上にそっと置く。


難しかった編入試験もなんとか解いた、先月届いた合格通知。俺はきっとその時の感動を忘れないだろう。

鏡に向かい合って、今日から新しい生活だと拳を握る。
もうしばらくしたら学園からの迎えの車が来てしまう、さっさと準備をしなくちゃいけない。


生まれつき色素が抜けたような、金色の髪の毛。鏡の向こう、青い瞳と見つめ合う。


好きでこんな派手な容姿に生まれたわけじゃない。

好きで居心地のよかった地元の高校を辞めたわけじゃない。

……それでも俺は、この容姿と向き合って生きていかなければいけないから。


誰もいないリビングで息を吸い込んで、よし。
気持ちを立て直すように小さく呟いた。




俺が地元の高校を辞めた理由は、喧嘩だった。荒れていた高校には窃盗や暴行などいじめが蔓延っていた。
それでも入学して半年はそれなりにうまくやっていたのだ。

しかしある日突然、理由もなく俺の友達がいじめられるようになり、しばらくすると彼は学校に来なくなった。友達だったはずの俺は、情けないことに、彼がいじめられていることにも気が付かなかった。

彼が学校に来なくなって、はじめてその事実を知り、気がつけば主犯格の男を殴っていた。
顔の原形を留めなくなるまで、ずっと、ずっと、ひたすらに殴り続け、気がついたら俺は先生に取り押さえられていた。

俺への処分はもちろん退学。
ただし、相手の生徒にもいじめ主犯格という非があったため、警察沙汰だけは免れた。


そんな時に、もしよかったら。と声をかけてくれたのが、母さんの弟である竜都おじさんだった。

叔父さんは大きな学園の理事長をしていて、今回の件を、姉である母さんから相談されてぜひ編入試験を、と勧めてくれたのだ。

そんな事があったのが、冬の出来事。
季節は過ぎて今は春。俺は今日から星渦学園の生徒になる。


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