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「この休暇中に風紀の幹部会議をする予定だっただろ、祭りに行く前に済ませるぞ」

加賀谷の台詞に清原がぎょっと目を見開く。この様子ではどうやら清原の中では幹部会議の予定は入ってなかったみたいだ。清原は実に不服そうに唇を突き出すと前のめりになって加賀谷に対して抗議をし始めた。

「えーー明日とかでよくない?今日はおとなしくお祭り行こーよー」

「元といえばお前が海見ながら会議したいって言い始めたんだろう。会議は初日に行う予定だったのを今日まで延ばしてきたのもお前だ。祭りは会議が終わってからにしろ」

「えー」

「別に行くなと言ってるわけじゃないんすから、大人しく会議やりましょう」

「えー!」

尚も駄々っ子のように文句を言い続けて聞かない清原と、呆れを通り越してもはや憐みさえ感じていそうな植木の表情に少々ドン引く。後輩に諭されるって、先輩として、そして副委員長としてどうなんだ…。
加えてそんな二人を前に全く動じない、相変わらずの様子の加賀谷に改めて風紀委員会のやばさに嘆息する。これじゃあ生徒会の方が何倍も、何十倍もまともな気がしてくる。しかし現在、風紀よりも”まとも”なはずの生徒会が稼働していないのだから、やはりどっこいどっこいなのだろうか。なんだかしんどいな。

「それじゃあそういう事だから、そっちは先に行ってろ」

終わり次第あとから合流する。駄々をこねる清原を総シカトして俺たちにぶっきらぼうに言う植木に、非常に辛そうな顔をした晴が恐る恐る尋ねる。

「風紀の会議ってさ……俺も出なきゃダメな感じ……?」

「幹部会議っつってんだろ。お前は先遊んでろ」

「遊ぶ……!!!!」

半分泣きそうになりながら両手に作った拳に力を込めて頷きながら言う晴。それを見て呆れたように息を吐く植木の姿に、多分晴も参加させたかったんだろうが晴の鬼気迫る様子に仕方ないから今回は晴抜きでと決めたのであろう事を悟る。そもそも一委員を夏休みの休暇中、例年幹部しか参加しない集まりに呼んだりしないだろう。まあ、そこには俺の身内という事も絡んでいるのかもしれないけれど、それなら猶更会議に不参加というのは不自然だろう。
晴の不参加はもともと加賀谷や清原との話し合いのうえで決められていたのか、それともこの場による植木の独断かはわからないけれど、晴の嬉しそうなその様子に和まずにはいられない。晴もそれなりに兄離れ出来ていないとは思うけれど、俺も大概弟離れをし逃していることは自覚している。思春期の大切な時期に離れ離れでいた俺たちにとって、今の関係は当然の結果なのかもしれない。


「場所は後で伝える、この後すぐ始めるから間に合うかもしれないな」

加賀谷の一言に清原の瞳が変わる。何が何でもお祭りに参加したいようだ、その心意気は晴とそう大して変わらない。


「神社行ってみるといいよ、面白い言い伝えあるみたいだから」

なんでも神様が上に帰る際に、なんでも一つ願い事をかなえてくれるとか。
頬杖を突きながらまるで嘲笑うようにして言う清原を一瞥する。
神様が上に帰る。その一文が気になりはしたけれど、突然席から立ち上がった加賀谷が清原を引っ張って外へ出て行ってしまったせいでその先を尋ねることは叶わなかった。
特に誰が何を言うわけでもなかったけれど、その流れでこの場はお開きということになったのだった。

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