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「随分赤城のこと気に入ったみたいだな」

「うん、赤城先輩面白いね。こんな事ならもっと早くに話しかければよかったなあ」

「僕も。晴くんとお話しできてとても楽しいですよ」

ニコニコ笑い合う二人の姿に何か違和感を感じて眉をひそめた。なんだろう、…二人を取り巻く空気が作り物めいている、というのだろうか。大半は赤城の気持ち悪い笑顔のせいかもしれないけれど、それにしたって妙な空間だ。
相性がいいと踏んだのは早計だったか。まあどちらでも良い、赤城と岩村のように顔を見るなり喧嘩腰にならないだけまだマシだろう。
お茶の入ったコップに口をつけそのまま煽ると、不意に晴がそうだ!と声を上げた。

「兄貴、このあと海行こうよ、泳ぎたい!」

晴の突拍子もない提案につい咽せる。いや海の近くの別荘へと泊まりにきてるのだから別に突拍子もないわけではないのだが、流石に昨日あんだけはしゃいでいたらもう十分だろうと思うし、バカ体力の晴のことを考えたって少しくらい休みを入れるだろうと思うだろう。それが、寝て起きたら体力全快したからまた遊びに行こう。だなんて。馬鹿体力にもほどがある。俺なんて少し遊んだだけでもう十分だと感じているのに。


「はあ?!昨日散々遊んでたろ。俺は行かない」

「ええ、勿体無い!…なら赤城先輩は?一緒にどう?」

「申し訳ございません、僕もこの後は少し私用がありまして…」

「なんだ、仕方ない。空でも誘おっと」

もはやばけもんだな…。呆れて何も言えないでいると遠くの方で椅子を引く音が聞こえてきた。
そちらに目を向けると、何かを察したらしい植木が慌てて食器を片付けようとしているところだったようだ。晴は何を企んでいるのか、その様子ににやりと口角を上げて笑うと上機嫌で植木の元へ駆け寄って行った。
晴の跳ねるように植木の元へ向かう姿を見送りながら、植木も大変だなと憐れに…というか申し訳なく思う。しかしあの馬鹿体力の晴に付き合える奴もそういない中で最初から最後まで付き合ってくれる植木は本当に貴重な存在だ。感謝しないとなあ。と晴に絡まれる植木を見つめながら他人事のようにそう考えていると、不意に赤城が小声で耳打ちをしてきた。

「会長。このあと少しお時間よろしいでしょうか?」

そう尋ねる赤城。
一体なんの用だろうか、見当もつかないが時間だけは無駄にたっぷりとある。暇そうにしていたら晴のやつがうるさくなるだろうし、断る理由もない。
首を傾げながらも、まあいいけど。と返事をすると赤城は親衛隊長らしい微笑みを浮かべて、まるで安堵するように礼を述べた。

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