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「二階は基本的にベッドルームだよ、トイレはここ。突き当たりはバルコニーになってる。二階は自由に使っていいからねー」

一階の案内が一通り終わり二階に上がってきた。
ここまで軽い案内を聞いてきたが、この別荘外観もすごかったが中も外観通りの煌びやかさと広さがある。清原の説明通り二階のほぼ大半がベッドルームということは一人一部屋くらいは余裕で用意されているのだろう。さすがといったところか。
清原は顎に手を置き少し考えるそぶりを見せると、おもむろに手を広げ部屋は好きに使って!と半ば放り投げるようにして、唐突に別荘内の案内を終えた。

あいつ、これ以上説明して回るのが面倒になったな。
早速手近にあった部屋のドアを躊躇いなく開け入っていく加賀谷の姿につられるように、植木も動き出す。まあベッドルームなんてどこも大差ないだろう、どこだって構わないと少し先にある部屋に目を向けた。

「兄貴、せっかくだし一緒の部屋にしよーよ!」

「はあ?」

不意に背後から腕を取られ引っ張られる。振り返ると晴が笑顔でどう?と首を傾げていて、晴に掛けられた言葉がいまいち頭に入って来ず今一度声に出して反復する。
一緒の部屋?俺と晴が?そこでようやく理解が追いついてお前いくつなんだよ、と呆れた顔をする。そんな俺の心情を知ってか知らずか、晴は至って真面目な顔をして俺の腕を引っ張り部屋の一つを指差した。

「ほら、二人部屋もあるし」

扉の開いたその部屋にはベッドが二つあった。よく見てみるとどの部屋も僅かながら部屋の広さや家具の種類が違うようだった。これだけ多種多様なベッドルームがあるという事はこの場所自体が客をもてなすための邸宅なのだろう、そう考えればこの必要以上の煌びやかさも頷ける。

「ねえーいいでしょ?」

「いや、流石に男子高校生二人が同じ部屋は…」

「兄弟だしなんも変じゃないよーいいじゃん、たまには!」

晴がぐいぐいと顔を近づけ迫ってくる。その勢いに押され、まあたまにはいいかな…とか思い始めてるのも事実。というか最近こういう感じで晴にゴリ押しされる事増えてないか?まさかあいつ、頼めば俺がなんでも許すってわかっててやってるのか?いやいや、そんなまさか…。

「いや兄弟だって高校生にもなって一緒には寝ないでしょ!ねー影也」

ぴょこっと扉の陰から顔を出して笑い混じりでそう言う清原に肩が跳ねた。一体どこから聞いてたのか。清原が同意を求めるようにこの場にいないはずの加賀谷の名を呼ぶと、それに呼応するように徐ろに向かいの扉が開いた。

「…ん、ああ。暑苦しいだけだろ。阿呆の考えることはわからんな」

腕を組み扉の壁にもたれ掛かる加賀谷は呆れたような顔をしている。少し扉が開いていたのか、それとも思ってたよりも俺たちの声がデカかったのか、どちらが理由かはわからないが加賀谷にもバッチリ俺たち二人の様子は聞かれていたようだった。
しかし、加賀谷ならばそんなの好きにすればいいとでも言うと思ったのだが、まさかそんな風に言われるとは意外だった。
そうか、あの加賀谷がそれ程まで言うってことはやはり、兄弟といえど一緒の部屋にする事はそれなりにおかしい事なのだろう。いまいち兄弟として普通の距離感がわからない俺や晴にとって他人の意見とはとても重要であるのだ。俺の腕を掴んだまま清原や加賀谷からの否定にむくれる晴に苦笑を漏らした。

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