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学園からバスで山道を走る事30分、星渦学園前駅という学園のデカさが伺える名前の駅でバスを降り、そこから大体40分ほど電車に揺られて何度か乗り換える。到着した駅から更にバスで10分ほど揺られると、俺たちの実家があった。
ようやくたどり着いた実家の門の前で晴と二人してどっと疲れにため息を吐く。とんでもない長旅のように思えたが、たかが1時間半だ。時間と距離にしたら大した移動距離でもないが何しろ今は真夏。普通に立っているだけで倒れてしまいそうな暑さなのだからこれだけ体力を消耗しているのも仕方のない事だろう。
どこぞの御曹司は運転手に迎えに来てもらったりするのだろうがうちは金はあっても庶民派だ。というか若いのなら歩きなさい、が母の口癖だし、そもそもうちの親が俺たちを全寮制の学校に入れたのも世間を知り自活の力を蓄え、親や家柄に甘えるなという厳しい教育からくるものなのだが、こんな日くらい迎えに来て欲しかったと晴が隣でうんざりしたように愚痴っていた。その意見に対して俺も全く同意見である。

「…」

「…」

「…入らないの?」

「あー、そうか…わかったよ」

一向に動き出さない晴と顔を見合わせ、晴が気まずそうに視線をズラして呟くように発した言葉にそういえばそうだったと思い出す。喧嘩中だから家にも入りづらいんだろう。仕方ない、ここは兄である俺が先導を切ってやるかと目の前に広がる門の脇にあるインターホンのボタンを押した。門の上方、こちらを睨みつけるように設置されたカメラに視線を移してしばらく待つと、見るからに重量のあるその門の扉はゆっくりと静かに開いていった。

『おかえりなさいませ、滝真様、晴様。ただ今そちらに車を向かわせておりますので少々お待ちくださいませ』

インターホンから聞こえて来た声に、少し考えてから迎えはいらないと伝えるとすぐさま隣から何言ってるの?!と非常に大きなブーイングが起こった。煩いなと思いながら視線だけそちらに移すと晴がとても不満そうに顔を歪めている。インターホンの向こう側でも少し困ったような声で、しかし…とかなんとか言っているがたかが2.3分歩けばいいだけの事だ。わざわざ車を手配するまでもないだろうに。晴の文句を聞き流してインターホンにいいから、と告げるとすぐにかしこまりました。と返事が返ってきて、それっきり声は聞こえなくなった。がっくりと肩を落とす晴の背中を叩いて歩き始める。玄関に着くまでに母さんへの謝罪の台詞でも考えればいいじゃないかと提案すると晴は諦めたように嘆息しながらそうだね、と俺の背中にくっついて来た。
その様子に少し笑って、門をくぐって真っ直ぐに伸びた敷石の上を静かに歩み進んだ。

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