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「なんだ、東先輩来てたのか。連絡してくれれば挨拶に行ったのに」

「ああ、俺もそう言ったんだけど東さんが、お前に会うと挨拶だけで終わらなさそうだからいいって。お前、上級生だろうが生徒会長だろうがお構いなく取り締まってたからな」

そう言うと加賀谷は少し残念そうな顔をして椅子に腰かけた。
東さんは誰からも好かれる人だった。それは加賀谷も例外ではなく、加賀谷にしては珍しくも東さんに懐いていた気がする。東さんが悪いことをすればきっちり風紀委員として取り締まりはしていたが。
手元の書類に視線を落として黙り込む加賀谷の姿を眺めながら、確かに東さんと会ってたらいろいろ煩そうだなとは思う。加賀谷ではなく、主に東さんの方がな。
クーラーが効いた会議室でこれから会議は始まる。加賀谷の隣のパイプ椅子の背をとって椅子を引きそのまま腰かけた時、会議室の扉が開いて待っていたその人が現れた。

「ごめん、待たせてしまったかな?というか、夏休み始まったばかりなのにごめんね」

「おはようございます、理事長。お気になさらないで下さい」

「おはようございます。理事長こそわざわざお疲れ様です」

加賀谷とほぼ同時に椅子から立ち上がって挨拶をすると理事長はいいよいいよ、と苦笑いを浮かべてから疲れたように嘆息した。
その顔はどこか浮かない上に疲労の色も見てとれる。何か仕事でも立て込んでて忙しかったのだろうか、大人に夏休みなど関係ないのだと思い知らされ、大人って大変だなとしみじみ思う。
そもそも学園のトップである理事長と高等部を束ねる、風紀と生徒会のトップだとはいえ、ただの生徒である俺たちが集まって会議するなど普通ではありえない。しかしそのあり得ないことをしなければならないのは、現在の学園の状態に問題があるからなわけで、今回集まったのは教師たちが把握しきれていない情報の報告会、またそれに基づいての今後の目標を決めるためであった。この会議の後、理事長と教師達の間で開かれるなんたら会議でいろんな事が決定される。
普通は逆だろ、なんで教師が学園の状況を報告される立場なんだか…全くとんだ学園である。


「それじゃあ早速始めようか、まずは浅葱くんから報告お願いします」

「はい。それでは一学期の報告をさせて頂きます。まずこの春、転入生が2名…ーーー」

用意してきた書類を読み上げていく。
本当にこの一学期だけでいろんなことがあった、常に走り回り常に何かに追い立てられ頭が痛い毎日を過ごしていた。
この夏で少しは息抜きができればいいのだけれど。真剣な眼差しで俺の話を聞く理事長と加賀谷に一度目を向けて、俺が会長として過ごしてきた夏の始まる前の出来事を、一つ一つ振り返り報告しはじめるのだった。

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