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雅宗の運転するバイクの後ろに乗り、揺られること30分くらいだろうか。
過ぎ行く街並みを眺めながら体全体に風を受け、バイクって便利だなとぼんやり考えてたらあっという間に、今回の目的地である隣町の八木高校に到着していた。
俺を襲ってきた馬鹿…もとい、花井先輩曰くこの高校に先輩方が"しめたい"奴らがいるらしい。
正直俺はそういう事に興味はないし、なぜ俺が連れて来られたのかは全くの謎ではあった。しかし俺とともに花井先輩方によって半強制的に連れてこられた雅宗が困ったような顔をしていたので仕方ない。今回ばかりは社会見学と思って大人しく同行する事に決めたのだった。

八木高の正門を前にバイクを止め、花井先輩ともう一人の先輩(草野先輩というらしい)が、俺たちより少し遅れて到着した3人の男子高校生と何やら親しげに会話をしていた。
3人のうち1人は花井先輩達と同じ制服だったが残りの2人は星渦のものだった。やはり星渦にも同じグループに所属する人はいるみたいだ。

計4台のバイクが正門前に仰々しく並び、俺を含めて7人もの他校の生徒が校門前で張っているのだ。
八木高の生徒は丁度下校時間だったようで、俺たちを避けるようにして帰宅していく生徒たちの視線が痛かった。


「なあ。全然話が見えないんだけど、どういう関係なんだ」

世間話をする先輩方を尻目になかなか現れない"しめたい"という奴らに首をかしげる。というかこういうのって敵対関係にある他校に乗り込む的なあれだよな。
いまいち状況が掴めずにいて、とりあえず今は目的としてる奴も現れずにみんな暇そうだし。隣でバイクにもたれ掛かり、暇そうにしている雅宗にこそっと耳打ちをする。
雅宗は少し考えるように黙り込むと、何か思いついたようにその場にしゃがみ込んだ。そして近くに落ちていた小枝を拾い、地面に何やら描き始めた。


「まず基本的なことから言うとだな、俺たちのグループがこれ。大体地元の…星渦とか、花井先輩とかが通う隣の公立の高校の奴らが集まってんだ。花井先輩は俺の中学んときの先輩なの。」
「ふーん、やな先輩持ったなお前」
「はは、そんなことないぜ。星渦ってやっぱり金持ちの偉い子ちゃんばっかだからつまんねーっていうか。やっぱあーゆう破天荒な先輩いると楽しいし。
まあそれでえーと、一応あの付近の不良どもが集まった、俺らのグループと敵対にあるのがこの八木高の奴ら。まあ敵対って言ってもそんな大層なものじゃなくて小競り合いみたいな感じなんだけどな」

今日も多分私怨だぜ、と花井先輩に視線を向ける雅宗に、雅宗はそーでもないと言ったがやっぱロクでもない先輩だなと思う。

そんな事より雅宗ってやっぱり高等部からの編入組なんだなとそっちの方が興味が出た。中等部の頃には見たことのない顔だとは思っていたが、何しろ雅宗のような奴が編入生とはなかなか珍しいのだ。
うちは色々と金がかかるし、編入となると学力もそれなりにないと入ることはできないだろう。問題児クラスのDとはいえ、色々と意外な奴だ。
そんな俺の視線に気がついたのか、雅宗は少し笑うと立ち上がり、地面に描いた落書きを足で払った。

「うち成金だからよ。会社に伝統とかねーし、いつ危なくなるかもわかんねーけど、一応今は成功してるわけだし次の世代の事も考えなきゃって無理やりこの学校入れられたんだわ」
「そうだったのか。…窮屈だろ、やっぱ」
「まーな。でもお前みたいな奴と会えて楽しいよ俺は」
「雅宗…」

柔らかく笑う雅宗に胸がじんわりとする。
こういうの、なんだか久しぶりな感じだ。最近は何をしてもつまらないし楽しいことなんて何もなくて、心が動かされる事もなかった。
こいつとなら、もう少しましな高校生活を送れるかもしれない。
俺も、お前と会えて楽しい。そう返すと雅宗は嬉しそうに笑った。

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