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「あずまさ、」

「どうもはじめまして。浅葱様の親衛隊隊長を務めさせていただいております赤城と申します、以後お見知り置きを」

俺のセリフを遮って自己紹介を始める赤城の、いわば親衛隊長モードの出現に口を噤んだ。人のいい笑みを浮かべながら会釈をするその姿は久しぶりに見るがやはり何度見ても感心してしまう。よく人によって使い分けられるよな、ニコニコ笑う赤城の横顔を眺めながら小さく嘆息した。

「んー?親衛隊か、随分デカいヤツが隊長なんだな……あ?」

「?」

「赤城って言ったか?あの赤城?」

そう言って目を丸めて赤城に詰め寄る東さんに首を傾げた。二人は知り合いだったのかと思ったがどうやら違うようで、赤城はまじまじと顔を近づけ見つめてくる東さんに狼狽えている。赤城のあんな様子なかなかレアだと思うが助けを求めるように俺に視線を向ける赤城に仕方ないと言うように東さんの名前を呼んだ。

「ちょっと距離近いです」

「ん?ああ、お前のだったな。悪い悪い」

お前の…って。東さんのセリフに呆れるが、そういえば東さんと東さんの親衛隊は大分濃ゆい関係にあったみたいだし、そう捉えられるのも仕方ないのかもしれない。夏休みまで一緒にいると思って見れば尚更そういう関係に見えてもおかしくはないだろう。
言われた通りに赤城と距離を取る東さんに、赤城はどこかほっとしたように嘆息した。

「赤城ってお前らが2年の時転校してきた奴だよな。まさかお前がこいつの親衛隊長とはねぇ」

そういってにやにやと笑う東さん。確かに赤城は去年うちに転校してきた外部生だ、去年生徒会長を務めていた東さんが時期外れの転入生である赤城のことを覚えていてもなんらおかしくはない。赤城には見覚えがないのか、怪訝そうな顔で東さんをじろじろと見つめている。東さんはそんなこと御構い無しにケラケラと笑うと、踵を返して仮眠室の扉に手をかけた。

「まだねみーわ、お前ここ出る時起こしてよ」

「は…ちょっ、東さん!」

「んじゃ、頼むねそーま」

ウインクを残してさっさと仮眠室に篭ってしまった東さんを見送る形になってしまったが、あの人は自由すぎやしないか。
部屋に二人残され沈黙が襲う。恐る恐る、赤城に視線を移すと、赤城は先程までからは考えられないほど非常に不機嫌そうな顔で俺を睨みつけていた。

「おい、赤城」

「そーま、だってさ」

「おい、話を聞け。東さんは違くて、」

「何だっていいよ、どうぞお好きに」

俺の弁解の言葉も遮ってはん、と鼻で笑う赤城はそのままソファに腰を落とした。そうして何も聞きたくないとでも言うように、殻に閉じこもるようにさっさと懐から取り出した携帯に視線を落としてしまった。
前々から扱いづらいやつだとは思っていたが、至極面倒くさい。何を拗ねているのか。
聞く耳を持たないのなら俺だって知らない。勝手にそうやってろ馬鹿。ムッとしながら、こちらを見ようともしない赤城を睨みつけた。まあ赤城は携帯に夢中でそんな俺にも気がついていないのだろうけれど。こんなことしてても仕方ないので口を噤み、自分の席についてパソコンに向き合う。
そうして、ようやく冒頭に至るわけである。

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