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「そういえば北条も来てないな。戸際岩村あたりはまあ、あのクソ生意気坊主たちのサボりならわかるけど…北条がすっぽかすとか想像できねぇんだけど、お前連絡自体してないのか?」

東さんは勝手に入れた紅茶を飲みながらそう不思議そうに訊ねる。
北条は1年生から生徒会役員だったので東さんと知り合いなのはわかる。しかし岩村と戸際に関しては彼と任期が被ることはなかったので一瞬おや、と思ったもののそういえば引き継ぎの関係で関わってたっけ。とは言うもののその引き継ぎも1ヶ月ほどの期間の出来事だったし高が知れているだろう、なのにも関わらず結構な言いように少し笑う、そういえば戸際も初めの頃はそれはそれは生意気だった。東さんの中での戸際はあの頃の生意気なクソガキで時が止まっているのだ、無理もないが今の戸際の様子を見たら度肝を抜かすだろう。少しだけ、その場面を見てみたいと思った。

「伝えてませんよ、連絡したところで来ないと思いますし」

「ん?なに、お前ら喧嘩でもしてんのか」

「喧嘩っていうか…まあ、そんな感じなんすかね」

「あら。お前ら性格真逆だけど意外と仲よかったのに、なんでまた?」

なんでと言われても。役員同士のトラブルの匂いに目を輝かせ話に食いつく東さんになんと答えたらいいか戸惑う。まさか馬鹿正直に、北条はこの歳にして初めて好きな子が出来て恋愛にうつつを抜かしています。なんて言えるもんか。その結果、仕事をすっぽかされ全て俺が請け負うことになっているだなんて絶対に知られたくない。仮にもこの人から会長職を受け継いだのだ、上手くやっていると嘘でも見栄を張りたいものだろ。
黙りこくる俺を疑問に思ったのか、東さんは目を丸めると首を傾げた。何をそんなに言えない事情があるというのだ、と言いたげなその視線から逃げるように俺は窓の外に視線を移した。


「…滝真?」

「すみません、そんな大した事じゃないんですけど。俺もその時は余裕なかったていうか、…夏休みでお互い頭冷やせたらなとは思います」

「ふうん、なんか思った以上にこじれてるみたいだな」

歯切れの悪い俺の返答に、どこか察したような顔で東さんは頷いた。
東さんはそれ以上話を掘り下げるでもなく、そういえばと全く違う話をし始めた。それは共通の知り合いの話だったり東さんの近況の話だったりで、役員の話で鬱蒼としていた気持ちはそんな雑談を小一時間したところでいくらか晴れていた。
東さんなりの気遣いだったのだろう、先輩に気を遣わせてしまって申し訳なさもあったがそれ以上にやはりこの人には頭が上がらないと再度思うのであった。

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