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試験二週間前にして、なんやかんやありつつも始まった加賀谷による授業は約一週間みっちり行われた。全教科の基礎という基礎をすべて叩き込まれ、いつもは何も手を加えない教科書もこの時ばかりはそのスピードと重量に必死に食らいついていくためにも付箋とマーカーでなかなかカオスになっていた。
そうして残りの一週間は一人で行った方が効率がいいだろうと半ば無理やり寮に押し込められることになる。実際加賀谷の言う通りで復習問題や応用問題を解くのに一人きりで自分の部屋に籠るのは性に合っていた。まあ部屋に籠るのは普段の試験前という感じだ、一週間前にしてようやくいつもの試験前に並べたわけである。

そうして、怒涛の二週間が過ぎ試験当日。
全部で3日に分けられる試験日だったがそれはそれは全日程が順調だったのは言わなくてもわかるだろう。
全ての試験を終えてから数日後、用紙の返却も済み全てを終えた今日。
点数と順位をまとめた表を眺めながら上機嫌で、生徒会室にて溜まった書類を前に優雅にコーヒーを飲んでいるわけだった。
結果は上々、いつもと大差なく大体どの教科も上位10位以内には入っている。加賀谷様様といったところだろうか。そんな加賀谷本人はさすがと言うか、ほぼ全教科一位を勝ち取っているわけなのだが。

気負うものが無くなった今、溜まった仕事も見ればそりゃ憂鬱にはなるが前ほどではない。それに試験期間中はどの委員会も部活も、活動が一旦中止になるため仕事はほぼ入ってこない。つまり加賀谷が半分仕事を捌いてくれたあの時のままなのである。

「本当に助かった。お前がいなかったらどうなってたか…考えるだけで恐ろしい」

「いい、俺もいい復習になった。それにお前の場合無理矢理にでも勉強モードにさせないといつまでも仕事してるだろ」

「…否定はできない」

呆れたように俺を見つめる加賀谷だっだが、加賀谷の言う通り俺は試験を捨ててでも仕事を終わらせようとしていただろう。あの時の俺は完全に試験よりも仕事を優先させていた、何かに取り憑かれたようにそればかりを重要視していて…本当に考えただけでも恐ろしいものだ。ソファにて一息つく加賀谷に心の底から感謝の念を抱く。彼がいなかったら俺はどうなっていたかわからない。

「ありがとう。加賀谷」

今一度口にする礼の言葉は、すこし気恥ずかしくも感じた。


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