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戸際にきつく当たって数日経った今日。結論から言うと今日も結局彼らは生徒会室にはやってこなかった。
戸際も岩村も、言い合いをしてからはまともな会話どころか姿を見ることさえなくなった。北条も響も前は一応生徒会室にはいたのに、ここ一週間近くは誰の姿も見ていない。

もちろん仕事の集まる生徒会室に足を運ばなければ仕事が減るわけもない。どんどん溜まっていく書類ややらなければいけない仕事たちに俺は一人毎日日が暮れるまで机に向き合い、少しずつではあるが捌いていた。その結果辛うじて外部に生徒会の現状が漏れずに済んでいる、もしこんなことが風紀や一般生徒にでも知れたら大変な事になるだろう。それだけはどうしても食い止めなければならなかった。

それに、実を言うと彼らが生徒会室に足を運ばなくなり顔を合わせなくなったのに、心のどこかでほっとしていた。なんせあんな出来事が起こった後だ、あいつらが生徒会室に来たところでどんな顔をすればいいのかわからない。いまはただ誰とも顔を合わせず何も考えず、一人黙々と仕事をこなす日々の忙しさに感謝すらしていた。

しかし、かと言ってこのまま放置しておくわけにもいかない。いまは辛うじて追いついてはいるが、今後俺一人では到底回らないし、そもそもそう言う問題じゃない。
役員が仕事にこない、なんて学園を変えるどころではない。ろくに役員どもをまとめる事も出来ないくせに何が理想の学園を追い求めてだ。自分がほとほと嫌になる。

すっかり暗くなった窓の外に深いため息を吐いてクタクタに疲れきった身体をソファに沈めた。
いつまでもこんな状況に黙っているつもりはない、あいつらをどうにかして連れ戻さなければ生徒会は壊れてしまう。いつか必ず話をしなければいけない。それが早いか遅いかだけの話だということは十分に承知していた。

「…あぁぁ……」

もはや考えただけで頭が痛くなる。誰もいない部屋で誰にも聞かれることはないだろうと安心しきって、 顔を両手で覆い情けない声をあげた…のがいけなかった。


「何を情けない声を出してるんだ」

はっとする。え、何今の声、と体を固め息を無意識に殺した。
しかしいつまでもそうしている訳も行かなく、上からかけられた、聞き覚えのある声に顔を覆った手の指の隙間からそっと伺えば、見えた加賀谷の姿にうわっと情けない声を上げて飛び起きた。

「なっ、なんでここに…てかいつの間にっ、」

「ノックしたのに気がつかなかったのはお前だろうが、それにしてもなんだこの有様は」

「っ、」

朝から晩まで生徒会室に篭りっきりで、ついに頭がおかしくなってしまったのかと思ったがどうやら違うらしい事にほっと安堵するが、しかしいまは安堵している場合ではない。案の定、加賀谷に痛いところをつかれてぐっと息を飲んだ。

「ここ最近生徒会役員の姿を見ない割に仕事は遅れ気味。一体何をやっていると問いただすつもりで来てみれば。これは一体どう言う事だ?説明しろ浅葱」

加賀谷の鋭い視線が俺を貫く。言い逃れを許さないというようなその目に捉えられ、それでも俺は必死に頭を回転させるが、加賀谷を納得させられるようないい誤魔化し方は何一つ浮かんではこなかった。
ここまでか、と追い詰められた悪役よろしく唇を噛んだ時だった、不意に扉が開かれそこから現れた随分久しぶりに見る顔に目を丸くさせた。

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