清原の独り言



「…以上がここ1ヶ月の様子です、北条はもう完璧に落ちたと言ってもいいみたいですね」

「そっか、ご苦労さま。それにしても意外と頭使えるんだね巡流坊ちゃんは」

クルクルと手の上でペンを躍らせながら、報告に来た委員に下がっていいよ、と告げる。委員の子が一礼して部屋を出て行くのを眺めながら、先ほど手渡された一枚の書類に視線を移した。

「なるほどね…まああんな騒ぎ起こして、うちにノコノコやってこられちゃたまったもんじゃないよね」

月に一度、響巡流からの生徒会潜入報告を毎月密かに受けていた。今月もいつも通り行われるはずだった…のだが、何しろ先日開催された球技大会で、彼は今まで隠して来たその素顔を曝け出してしまったもので今や時の人。
学園内は専ら巡流の素顔や素性についての噂で持ちきりだ。そんな人間がうちに頻繁に出入りしているなんて噂にでもなってみろ、俺のシナリオが全て台無しになってしまう。

率直な意見を言わせてもらうと正直勘弁してほしいと思った。いくらなんでも変装を解くのが早すぎる。もう少し…そうだな、会長が追い詰められたところで、その素顔を全校生徒の前で晒してやるのが俺の理想だった。そしてそのタイミングで巡流が実は影也の血の繋がった弟で、風紀委員だと公表すれば生徒たちの反応は予想に容易い。
あらぬ噂が飛び交い生徒会自体への信用もゼロに等しくなったその時、新たな学園の王が、王をなくした生徒たちの前に現れる。そうすれば生徒会という組織の行く先は目に見えているだろう。勿論、学園のトップ組織が崩れれば学園も新たな王のいる風紀委員の元、大きく変革をせざるを得ない。影也が目指しているのはそこだった。

謂わば、巡流の存在は俺たち風紀にとってジョーカーのようなものなわけで、使い方次第で戦局は大きく変わってしまう。
ただまあ、多少タイミングがずれたとて問題はない。俺が組み立てたシナリオ通り、物語は進んでいくのだ。

「あはっ、さいっこーだね」

考えただけでも笑いが漏れてしまう。
一番気に掛かっていた生徒会の会計。あれは会長に近すぎる、妙な信頼関係は俺にとって邪魔者以外の何にでもなかった。
しかし情報によれば、なにやら勝手に内部分裂も始まりかけているみたいだし順風満帆とはこのことか。

巡流によれば、ここ最近のトラブル続きで生徒会内は大分雰囲気が悪いようだ。ここからが巡流の腕の見せ所、かな。彼には頑張っていただかなければいけない。
俺たちの…俺の目指す、その日までは。

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