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岩村の言葉が頭から離れないのはあいつが信頼している友達だからだ。
今は生徒会長と会計という関係だが、それでもそれなりにうまくやっていると思っていた。同じ生徒会の支え合える仲間だと本気で思っていたんだ。現に今までだってあいつは俺を支え助けてきてくれた。あいつだけじゃない、北条も、戸際もそうだ。ランキングとはいえど全生徒から選ばれ、皆んなそれぞれ自負があり学園をより良いものにしようとしていた。そんな中で少しでも過ごしやすい学園にという俺の掲げる理想の学園像に近づくため、ついてきてくれていたはずだった。
それなのに。
「っ、」
本当に向いていないのだろうか。北条も本当はずっとそう思っていたから、今は側にいないのだろうか。戸際もいずれ、離れていってしまうのか。
俺は、会長になるべきではなかったのか。
「あ…」
「お前だったか…御手洗」
先の扉の音で2人とも出て行ったとでも思ったのか。不意にひょっこりと姿を現したのは一つ下の御手洗だった。
げ、とあからさまに顔を歪める御手洗に苦笑を漏らす。どうしたものかと距離を取り戸惑う様子の御手洗に、こっち、と手招きをした。
「悪かったな。変なとこ見せて」
「いや…まあ、こんなとこで喧嘩とか勘弁してほしいっすけど」
「喧嘩…そうだな、喧嘩だなあれは」
18にもなって、情けない。お互い言いたいことを言って、相手を省みようともせずに。
そういえば久しぶりに岩村が声を荒げた姿を見たかもしれない。高等部に上がってからの岩村は随分穏やかだった。
「会長、辞めるんすか」
「…やめねーよ」
「…そっすか」
そんじゃ、俺行くんで。とさっさと立ち去る御手洗を見送る。
実際俺が辞めても辞めなくてもどっちでもいいと思っているくせに。おかしな奴だと思う。
もう少しで昼休みが終わる。早く教室へ戻らないと授業が始まってしまう。けれど、もう少し、こうしていたかった。今は誰の顔も見たくなかった。
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