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購買で買ったおにぎりにかぶりつく。男子学生向けに大きめに握られたおにぎり、その中の具のバリエーションは学校の購買では考えられないほど豊富なのがこの商品の人気の理由の一つだった。
その数十種類もある具の中で俺はスタンダードに鮭とおかかを好んで、それ以外に挑戦したことはなかった。ちなみに今後挑戦する気もない。鮭とおかかで十分だ。


「それにしても球技大会がすんなり終わってよかったよ」

「すんなり…すんなりとはいってないだろ」

「えー?そうかなぁ。生徒会の書記がちょっとトラブルに巻き込まれたり、生徒会の補佐代理がちょっととんでもない素顔だったりしたくらいじゃない」

「…ああ、そうだな…そんな些細な事件もあったな」

喉で笑う岩村に大きくため息を吐く。
球技大会が終わり一週間が経った。戸際の件は競技中のトラブルという事で、加害者には厳重注意という形で特に大ごとにならずに済んだが、響の件はそうはいかない。なんたって、あの、生徒会補佐代理。もじゃもじゃ頭で瓶底眼鏡、そんな冴えない男の素顔がまさかの超美形ときたもんだ。兼ねてから噂になりつつあった理事長の甥という事実もセットで、新聞部は大きくその件を見出しに飾った。

そこから学園内はお祭り騒ぎだった。武蔵野が懸念していた、響を狙う輩が現れるのではないか、というのも現実に起こる始末。
もう少し学園内が落ち着くまでは1人行動は禁止、なるべく生徒会のメンバーと行動を共にすることが先日の生徒会会議で決められた。

どうやら赤城によるとあの事件以降、響の親衛隊なるものも結成されつつあるようだ。
急な周りの変化に一番振り回されているのは響本人のはずだが疲れた様子は一切見せず、あいも変わらずその無邪気さというか、屈託のない笑顔で北条らへんを癒している。

ちなみに北条はあれから生徒会室に来はするものの仕事の進みは非常に遅い。まあこの間までと比べれば生徒会室まで来るだけまだマシなのでいい方に進んでいると思って長い目で見守ろうと思う。

戸際はあれから病院へ行ったらしい。
結果は特に問題なし、ということで次の日から普通に仕事をしてもらっているがなんだかいまいち本調子に戻らない。
なんというか…やることなす事全てが裏目に出ている気がする。ミスばかりで余計に仕事を増やしているのではないだろうか。
あの一件から様子のおかしい戸際をみんな心配しているが当の本人は笑ってごまかすだけでなんの解決にも繋がらない。もう少し様子を見て、これが続くのであれば一度何か考えなければいけないな。


「…生徒会はこんな調子で大丈夫なのか…」

「もーさ、辞めちゃえば?生徒会長なんて」

ふと漏れた俺のぼやきに、岩村はなんて事もないようにさらっと、とんでもない返事を返す。
考えてもいなかった返答に目を丸めて隣に座る岩村を凝視した。岩村はそんな俺に目もむけず、目の前に広がる景色を眺めながら食べかけのパンを口に押し込んだ。


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