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「なんで、戸際くんに怪我させたの?なんで、」
「は。そんなのはお前が一番わかってんじゃねぇの?」
「っだから、何も関係ないって言ってるじゃん、俺の話聞いてよ」
「そうは見えねーんだよ!」
2人は脇目も振らずに言い合い、その不穏な空気に次第に周りの視線が集まっていく。
それに気がついてないのか浜野も成もお互いに睨み合い、言い合いを収めようとはしない。ここは生徒会長として喧嘩を諌めるべきかと2人の元へ向かっていくと、すぐそばにいた響は静かに待てよ。と呟いた。
「おい、なんだよ。痴情の縺れってやつで快斗に怪我させたのかよ…ふざけんな、やっていいこととだめなことがあるだろ?気に触るんだったら話し合いで解決しろよ、なんで楽しい行事中に、こんな怪我させるみたいなこと…こんなのフェアじゃねぇよ!」
声を荒げて本気で怒ったように浜野を睨みつける響に目が奪われる。あいつは人のために本気で怒れる奴なのか。響の言い放った台詞に心臓がぎゅっと鷲掴みされたような衝撃を覚えて言葉を失った。
響の様子に浜野も一瞬たじろいだが、それを誤魔化すように鼻で笑うと響を上からきつい眼差しで睨みつけた。その体格差からもし取っ組み合いにでもなれば響の不利は見て取れるし、体格のいい浜野が手を出せば響はひとたまりもないだろう。
「きゃんきゃんうるせえな、調子乗ってんじゃねえよこのマリモが!」
流石にどうこういってる場合ではない、今すぐにでも仲裁をしなければ。今にも手が出そうな2人の様子にじわりと嫌な汗をかく。と、その直後、浜野の右手が響を突き飛ばした。尻餅をつく響。その拍子に取れたメガネを浜野は笑いながら踏み潰した。
「は、はは。弱いな、失せろ」
「おまえが、うせろ」
ドスの効いた声に目を見張る。今の声は響だろうか、響は徐に立ち上がり服についた砂を払うと、自身の髪の毛を掴んで…ー有ろうことかそれを取り外した。
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