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「会長、お疲れ様です。タオルとドリンクを」

試合が終わり近くのベンチに座り込んでいたところに、頭上から声をかけられる。見上げれば、丁寧に畳まれた白いタオルとスポーツドリンクの入ったペットボトルを差し出す赤城の姿に少し目を丸めて、ありがとうと一言礼をしてからそれらを受け取った。

結果は僅差でうちの勝ち。試合が終わった直後は珍しいことに清原が汗をダラダラかいてたがそれもそうだろう。対戦相手のFは強かった、それこそ手を抜く暇もないくらいに。
清原はここ数十年分のやる気と元気を使ったとぼやいていたがこの後の決勝はどうする気なのか。少々不安は残るが本人のやる気次第だ、見守る他ないだろう。そんなことを1人悶々と考えている隣でにこにこ見守る赤城に、なんだよ、と眉を顰めた。

「いえ、会長の生き生きとした顔が久しぶりに見れて良かったと思いまして」

「…やめろ、生き生きしてるとか言うな」

「はは、次の決勝も頑張ってくださいね」

Bチームなんて叩きのめしてやってください、と可笑しく言う赤城の目はなにも笑ってない。そうかBチームは岩村のチームだったか。相変わらず赤城と岩村の関係は最悪らしい。何を考えているのか赤城の不気味な笑顔を、引き気味で眺めていた。

「そういえばお前はなにに出てるんだ?」

「俺はバレーとサッカーですよ。どっちも負けてしまいましたが、そういえばサッカーは戸際くんのチームが勝ち残ってましたね」

「へえ、戸際のチームが。見に行ってみるか」

「ええ、俺もお伴しますよ」

バスケの決勝までもうしばらく時間がある。面倒だからといって体育館から出なかったせいで外の競技の様子は一切を知らない。せっかく最後の球技大会、参加することが出来たんだから観戦に行ったっていいだろう。あの戸際が頑張っているというのならなおさらだ。
赤城は行きましょう、と俺に外履きを手渡すとにっこり笑った。なぜ俺の外履きを持っているのか、用意が良すぎじゃないかと鳥肌がたったがせっかく親衛隊隊長としてやる気になってくれているんだ、余計な事を言ってやる気を削ぐようなことはしたくない。言いたいことを飲み込んだせいかとても微妙な顔になったが、赤城は大変満足そうに頷くと、こちらです。と歩き始めた。



「?なんだ、騒がしいな」

「ですね…何かトラブルでもあったんでしょうか」

観客の集まる校庭、サッカーのコートでは一時試合は中断されなにやら揉め事が起こっているようだった。
ざわつく観客をかき分けて進めば、誰かが倒れているのが遠目で見てわかった。
担架を呼ぶ声と、言い合いの声、そしてそれを止めようと制止の声がコート上では飛び交っていた。
一体何があったのか、一度赤城と顔を見合わせてから、コート上を目を凝らしてみれば、牙を剥くように今にも殴りかかりそうな勢いで相手チームに詰め寄る男が植木だとわかる。
何をやってるんだあいつは、と眉を顰めて、さらに目を凝らせば、


「戸際?!」

そこには頭から血を流し地面に倒れる戸際の姿があった。

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