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「さあさあさあ!この日がやって参ったぞ!諸君、意気込みは如何かな?!」

集まるクラスSの生徒たちの中心で声高らかにそう演説する委員長の姿を少し離れた場所から眺める。
おおー!とやる気十分の様子を見せるクラスメイト達に、いつもは上から人を見下すような奴らがやけにやる気満々だなと不思議に思うが、彼らは謂わば人生の勝ち組だ。家柄も、自身の才能も全てがトップクラス。そんな彼らの中には負け、なんて言葉はないのだろう。やるからには勝つ、それがクラスSのクラスメイト達だった。

「にしても、暑苦しいな…」

「おい浅葱、なーに白けてんの!ほらほらせっかくの行事だぞ〜〜盛り上がろうではないか!」

「わかったからはしゃぐな!」

円の中心にいた委員長は目敏く、集団から外れて気だるそうな俺に気がつくと大きく手を振り声を張り上げた。
盛り上がるクラスメイトの視線がこちらに向き居心地の悪さを感じている時、ようやく体操服に着替え遅れて岩村、その後ろからは北条がやってきた。
こちらに向かってきた岩村は辺りを見渡して楽しそうにはしゃぐ。

「皆んなやる気いっぱいだね〜頑張って一位狙お〜」

「当たり前だね!岩村、期待してるぞー!


きゃっきゃとはしゃぐ岩村と委員長の姿を北条は呆れたように眺めながらそっと俺の隣に腰を落とした。

「なぜ今更、生徒会役員も行事参加など…」

「ん、ああ。役員も生徒であることには変わらないしな。こういう小さなところからコツコツとが必要なんだよ」

「は。あなた、まさか本当に学園を変えようなどと思ってるのですか?」

「…今すぐ全て改革しようとは言わない。俺の、俺たちの代でその足がかりくらい築ければいいと思ってるだけだ」

驚いたように目を丸めて俺を凝視する北条に笑いたきゃ笑えと呟く。どんな小さなことでも俺は、それを繰り返して確かに少しずつ前に進めていればいいと思っている。いつかたどり着く未来が今よりもよりよいものならば、きっと今の俺は報われる。そう信じているのだ。

北条は黙ってそれを聞いていた。俺は北条に、馬鹿みたいか?と問うた。何か言おうと口を開きかけた北条はぐっとそれを飲み込むと徐に立ち上がって、はしゃぐ岩村達の元に歩き始めてしまった。

「北条、」

「…好きにすればいい。それがどう転ぼうが、今はあなたの代だ。けど…あなたの考えについていくかは僕たち自身が決めることだ」

立ち止まり、こちらを振り返らずにそう呟くよう言った北条。その後ろ姿に口を噛みしめる。北条なら何も言わずについてきてくれると信じていた。疑いもしなかった、今はただただそんな俺が馬鹿らしかった。

「そうだよな」

やるのは自由。それについてくるのもついてこないのも自由だ。北条の言っていることは何も間違ってはいない。

ただ、北条に置いていかれた今は、どうしても前に進むための一歩が踏み出せないような気がしてならなかった。



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