bad man



陽が傾き窓からは西日が入ってくる。眩しいほどの日射に目の奥がチカチカと光り、これではまずいとカーテンを引いて閉ざした。
外からの日差しが遮断され室内は少々暗く感じるがよく見てみれば電気は一つしかついていない。そりゃカーテンを閉めれば暗くもなる、しかしスイッチを付けるためだけにわざわざ扉の方まで赴くには些か腰が重たかった。

「やけに西日入りますね、前はもう少しマシじゃなかった?」

「夏が近づいてきてんだろ。いつも夏前になると眩しくってやってらんなくなる」

「電気おつけしますね」

「ん、ああ。頼む」

ソファに腰掛けていた男、赤城は微笑むと電気のスイッチを入れた。
瞬間室内に灯る人工の明かりに照らされ手元の書類の細かい字までよく見えるようになる。さんきゅ、と一言礼を言えば赤城はただ笑うのみで何も言うことなくそのままソファに腰掛けて小説に視線を落とした。
素直で従順なその姿と訪れる沈黙に一抹の不安を覚える。しばらく前からずっとこんな調子なのだ。
他の役員どもが仕事をサボりがちになりはじめたくらいから代わりというばかりに赤城はここ生徒会室に入り浸るようになった。
いつものように邪魔をするのならば問答無用で叩きだすのだがいかんせんこの調子だ。邪魔をするどころか何も言ってないのに丁度欲しいと思ったタイミングでコーヒーを入れてくれたり室内の掃除をしたり、たまにお使いまで引き受けてくれる。
そんな、まるで親衛隊の鏡みたいな事をいきなりし始めた赤城に、俺は何も言えずじまいだった。
何を企んでる、かは知らないがどうせ今問い詰めても何も答えやしないだろう。ならば気色悪い事この上ないが、赤城の気の済むまでやらせておけばいい。そう判断したわけだった。

「なあ赤城、親衛隊って横のつながりとかないのか?」

「横のつながり…というと、他の役員や風紀の連中の親衛隊ってこと?ないね」

「そうか、そんなもんなのか」

てっきり親衛隊は親衛隊同士、利害関係でもあるのかと思ったがそうではないらしい。ならば敵対、というわけでもないみたいだしきっと彼らには彼らなりのルールがあるのだろう。到底、俺たちでは想像もつかないようなものが。
小説から目を離さずに話を続ける赤城をぼんやりと眺めた。


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