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「佐野ちゃんじゃーん、どしたの?」
「あっ岩村もいたのか。悪いけど浅葱借りてい?」
「あっいーよいーよ!全然持ってって!」
それじゃ俺はここで!手早く委員長と挨拶を交わし、いつの間にか俺の腕を外してさっさと廊下を駆けて行ってしまった岩村。その後ろ姿を呆然としたまま見送る。あまりの素早さに何も言えずじまいだったが、あいつ逃げたなと悟る。
その場に残された委員長は目をぱちくりとさせて、はっとしたように俺に視線を移した。
「そうそう、この前頼んできた風紀委員長と補佐代理くん…加賀谷と響くんの関係についてだけど」
「ああ、もうわかったのか?」
「ばっちり。場所変えようか」
右手でピースを作りにやりと笑う委員長に頷く。
それならば一般生徒が出入りしない生徒会室が妥当だろう。
「先に売店寄っていいか?昼飯買ってく」
「おっけー、昼休み終わる前にさっさと行こうぜ」
両手をポケットに突っ込んで先を早足で歩き出す委員長の後ろ姿を眺める。北条に関しても加賀谷に関しても、問題の渦中の人物である響には頭が痛くなる。これで少しはスッキリすればいいけどな。
何やってんだよー、と前から急かす声を掛けられて、はっとする。適当に返事を返して、小走りで後を追って歩き始めた。
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