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「岩村。生徒会室いくぞ」

会議が終わり早々に立ち去ろうとする岩村の進行方向に立ちふさがる。あからさまに嫌な顔をする岩村に顎で廊下を指して暗に行くぞ、と示した。
加賀谷と清原がこちらに視線を向け事の成り行きを見守っている中で北条の話はしたくない。それは岩村も同じだったようで、嫌な顔をしたまま特になにを言うでもなく、渋々といった感じで俺の後ろにくっついて歩き始めた。


「…で。どうなってんだ」

「えーなにが?」

「何がじゃねえ、北条だよ」

ああ、そのことね。と軽やかにうそぶく。
その様子にそれ以外何があるんだと心中穏やかではないがあくまで冷静にだ。
で?と話を促すが岩村はどうにも煮え切らない態度のまま、話し始めようとしない。進む廊下の途中、足を止めて踵を返す。後ろをくっついてくる岩村と向き合うようにして立ちその目を見据えた。

「何がそんなに言いにくいんだ」

「…めぐるだよ。もうここ最近ずーっとめぐるに構ってばっかでろくに仕事もしてないみたいだし、夜中まで電話とかしてるみたいだから寝不足も酷いみたい。今日も一緒にお昼寝だって」

「…はぁぁぁぁ」

そんな阿呆みたいなことがあるのか。自分から聞いたとはいえ妙な話を聞かされればながーい長いため息も吐きたくなる。もしや岩村もこうなることを見越して話すのを渋ったのかもしれない。
しかし会長として聞かない知らないで通すわけにもいかないし、本当に手のかかる役員どもだ。ましてや今まで一緒に諌める立場だった北条があんな風になってしまうだなんて。

「どうすんだこれ」

「知らないよ、俺にはなーんもできませんし」

あくまで我関せずで通そうとする岩村。曲がりなりにも同じ生徒会の仲間。そのうちの一人がおかしくなってるというのだからもう少しどうにかなんないのか。もーいい?と首をかしげる岩村に阿呆かと一喝入れる。こうなれば今後どうするかふたりで話し合いをせねばならない。逃げようとする岩村の腕を掴んでほら、と引っ張った時だった。

「おっいたいた、浅葱ー!教室にも生徒会室にもいなかったからどこ行ったかと思ったわ」

「…委員長?」

廊下の先から手を振り、声を張り上げて俺の名を呼ぶ人物に目を細める。そこには同じクラスの委員長がこちらにむかって大股で歩いて来ていた。

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