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「響、先ほど清原から親睦会後に渡したと言う書類の件について聞かれたんだが何か知ってるか?」
「書類…?あっ、はい。それなら千里に渡したけど…」
「ああ、あれなら僕の机の上にあるよ。黄色い付箋貼ってある」
面倒臭そうに受け答えする北条にいらっとしながらも、北条の言う通りに机の上を探してそれらしき書類を発見する。
清原がうちに回して来た書類っていうのは親睦会の事後報告書か。簡単に目を通していくが、ところどころある空白と短すぎる文章に無意識のうちに眉間に皺がよっていく。
随分とお粗末な内容だ。なんだこの書類は。
「おい、まさかこれで完成なんて言わないよな?」
「完成ですよ。時間もありませんでしたし仕上げただけマシでしょう?」
ふざけたことをぬかすなと一蹴してやろうかと思ったが寸前で口を閉ざす。もうこれ以上こいつらと会話するのは面倒だ。何を言っても伝わる気がしない。
苛立つ気持ちを抑えて小さく息を吐く。もういいですか、と急かす北条を無視して響を呼んだ。
「この書類を清原に届けてくれるか、急ぎで必要みたいで急かされてるんだ」
「だめですよ。巡流はこの後新聞部に行かなければならないので」
「はあ?」
「以前頼まれた役員紹介の取材です」
「そんなの時間を変更させてもらえよ!急ぎだと言っているだろ」
「取材も立派な仕事だと思いますが?それともあなたが取材を受けますか?」
北条の挑発するようなセリフに言葉に詰まる。なにせ俺はそういった新聞部や広報部の取材が苦手だった。そういうものは全て避けて通って来たのだ。勿論行事の挨拶など必要なものには出るが、基本的に新聞部などメディア系部活の相手は北条や岩村に任せて来た。
それを知る北条だからこその売り言葉だろう。はらはらと俺と北条の言い合いに困惑する響を横目で見て、いや言われっぱなしは癪だ。何か言い返してやろうかと口を開いた時だった。
ポケットから流れる着信を知らせるメロディにタイミング悪いのかいいのかわかんねぇな、と舌を打って電話に出た。
「もしもし?」
『あっもしもーし、会長?清原でーす』
電話口の向こうから聞こえてきた覚えのある軽いノリにああ、と相槌を打つ。
『いやさっき話した書類あったかなって思って 。ちょっと今から必要になっちゃったんだよねぇ』
「…わかった。見つけたから今から届ける」
『よかったー助かる!頼んだねー』
そんじゃ、と早々に切られた電話にさてどうするかと北条に視線を移す。いつのまにか響と岩村はいなくて、部屋には北条だけが残って、静かに俺の様子を伺っていた。
その態度にもういいと首を横に振った。
「風紀んとこには俺が行く」
「そうしてください。それでは僕たちは行くので」
あくまであの態度を続けるらしい。
にこりともせずに俺を一瞥するとさっさと生徒会室を出て行く北条になんだあれ、と悪態をつく。
何をあんなにツンケンしてるのか。明らかにおかしい北条の態度を疑問に思いながらも、さっさと風紀に届けてしまおうと書類を片手に、気持ちを切り替えて生徒会室を後にした。
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