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「はぁ……?おい、何やってんだお前らは」

「あっ会長ー、お疲れーどしたの?」

「あっ、お、おつかれっす!」


騒がしい生徒会室に顔をしかめた。
スマホから片時も目が離せないようで、こちらを見ずに挨拶をする岩村はだらしなくソファに横になっているし、その隣では響が俺とスマホを忙しなく見比べながら挨拶をした。
お前らは生徒会室で何やってんだ、と強く叱責しようと大股で2人に近づいていけば、奥の仮眠室からひょっこりと北条が顔を出した。

「あれ、どうしたんですか?」

「どうしたって…お前こそそんなとこで何やってんだよ、仮眠するほど仕事も溜まってねぇだろうが」

「ああ、いや。昨晩あまり寝てないもので」

そういう北条の顔には確かに疲れが見て取れた。欠伸を噛み殺す北条に、一体なぜ睡眠不足なのか訊ねようか口を開いた時、生徒会室には岩村のうるさい叫び声が響き渡った。
キーンと耳鳴りがする。突然の大声に思いっきり顔を顰めて間髪入れずに机の上に置いてあったノートで岩村の頭をひっぱたいた。

「うるせえ!大声を出すんじゃねえ!」

「あっ、ごめんごめん!いいとこまで行ってたのにめぐるにしてやられたからさー」

「へへっこれで俺の3勝だな、そろそろ諦めたらどうだ!」

何をやっているかと思えばこの2人、スマホでゲームの通信対戦をしているではないか。
だんだん険しくなっていく俺の顔にも気がつかずに楽しそうにゲームの話をする2人に肩が震える。あのなぁ、と怒りを抑え声を絞り出すように話し始めると2人はきょとんと目を丸め不思議そうにこちらに視線を移した。

「……。ここは生徒会室だ、遊び場じゃない。ゲームをすんなら目障りだから出て行け」

極力落ち着いて、怒鳴らないように気をつけながらそう言えば響はきゅ、と口を結び悲しそうな顔をしてから俯いた。それを横目に岩村は引きつった顔でうわきっつー、と呟くと響の腕をとって立ち上がる。凍る生徒会室内、泣きそうな顔の響と腑に落ちないような顔の岩村になぜだか俺が悪いみたいな空気じゃねえか、と舌を打つ。冗談じゃない、なぜ正論を言ってそんな顔をされなければならないんだ。しかも怒鳴らないようにと気を使ったのにも関わらず、だ。
北条も何か言ってくれと先程から黙ったままの北条を振り返れば、北条は少し怒ったような顔をしていて、その見慣れない表情に開いた口が締まらなかった。

「もう少し言い方があるのでは?岩村くんはともかく、なにも巡流はずっと遊んでいたわけではありませんよ」

「……はぁ?」

まさかそうくるか。
いつものようにぴしゃりと言ってのけてくれるのかと期待していたがそれはまったくのお門違いだったみたいだ。ぴしゃりと言われたのは俺の方。言い方を気をつけろ?全くわけがわからん。

「ちょっと副会長、俺だって仕事してたよー!」

「そうですか?今朝から態勢が変わっていませんが」

「…千里、龍生!俺が、悪いんだ。会長が言うことはもっともだと思う、ごめん…」

「そんな!そんなことないよ?会長がちょーっと頭が固いだけでめぐるは悪くなんかないよ?」

「そうですよ言い方もきついですし、あなたがそんな顔する必要なんてないです。ほら、顔上げて」

はて。俺は一体なにを見せられているのか。
目の前で繰り広げられる茶番にうんざりしてため息を吐く。
もうなんだっていい。頭がおかしくなったのはお前らではなく俺なのかもしれないと一瞬不安になるが思い直す。それはない、断じてお前らがおかしい。
俯く響の肩を支えながらさぁ食堂でお昼でも食べましょう、と出て行こうとする3人を見送りつつ、そういえば、とここに来た本来の目的を思い出す。
最悪だ。いまのこいつらと話をしてもうまいこと収まる未来が見えない。
げんなりする気持ちを必死に奮い立たせて部屋を出て行こうとする背中に、おい。と声を投げた。

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