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授業の終わりを告げる鐘がなる。
初老を迎えて白髪混じりの頭を掻く数学の教師は残りの問題は各自解いてくるように、と指示するとさっさと教室を出て行ってしまった。
昼休みに騒がしくなる教室内。喧噪の中教科書に書き込んだ全ての問の答えに間違いがないのを今一度確認してぐっと伸びをした。
親睦会がなんやかんや起こりつつも無事に終わって一週間。学園は平和だった。
生徒会の仕事も一区切りがついていてここ数日は授業にも出れてたし、生徒会も放課後の活動だけで間に合うくらいには手が空いていた。

「あ、会長」

不意に俺を呼ぶ声。教科書を閉じながら声のした方、教室の出入り口に視線を向ければそこにいたのは風紀の清原だった。
珍しい人物の登場に目を丸める。風紀の清原も加賀谷も同じクラスSだが今期に入ってからは教室では全く見ていない。話によると俺が欠席している時にたまに来るというらしいがその頻度からして風紀もやはり忙しいのだろう。学生の本分は一体なんなのかまったく考えさせられる案件だ。

「珍しいな、どうしたんだ?」

「ちょっと用事あってねぇ、この前渡した書類ってできてる?今日の会議で使いたいんだけどさ」

「書類?」

うん書類。そう言って笑う清原に首を傾げた。
風紀から書類なんて預かっただろうか考えてみるがそういった記憶は見当たらない。そんな俺の様子に徐々に不安そうな表情をする清原。慌てて取り繕うようにいつ渡した?と問う。

「確か親睦会終わった後らへんだけど…巡流に渡したんだよね」

「響か、もしかしたら北条らへんが受け取ってるかもしれないから確認してみる」

「申し訳ないねー、頼んだよ!」

ひらっと手を振って教室を出ていってしまう清原の背を見送る。わざわざ書類を受け取りに来たのだろうか、そもそも存在自体を認識していなかったとは申し訳ないことをした。

清原が響のことを親しげに呼んでいるのには少し驚いた。響の人を惹きつける力には脱帽だ。
親睦会が終わった直後から今までの比ではないくらいに北条は響にべったりだった。他にも響が他の生徒から親しげに話しかけられている場面を見るとやはり響は不思議な男だとつくづく思う。

「生徒会室行くか」

北条も岩村も揃って今朝から見当たらないので、どうせ生徒会室にでもいるのだろう。
今朝のうちに購買で買っておいた昼飯を片手に、教室を出ていく。あくびをしながら、ゆったりと生徒会室を目指して廊下を歩き始めた。

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