stupid
足を組み替えると、随分長いこと使い古されてきた風紀委員愛用の椅子がぎい、と低い悲鳴を上げる。
目の前のソファに座る金髪頭が怯えたような目でこちらを伺うように見るもんだからおかしくって喉でくつくつと笑った。
「そーかそか、副会長がねぇ」
「…本当に、こんなやり方であってるのか?他にもっとやり方ないのかよ」
わお、まさかそれを今言ってくるとは。
純粋に驚きで目を丸めて肩をすくめてみせるれば巡流はその丸くて青い目をきつく釣り上げていた。馬鹿にするなと言いたいのだろう、この男の考えは手に取るようにわかる。だから動かしやすいんだ。
「何をいまさら。あまりにうまくいくもんだから急に怖くなってきた?まだ始まってもないのに」
「…俺は、学園を変えたい。そのためには協力は惜しまないつもりだし指示も守るつもりだ。けど、」
徐々に弱くなって行く語尾についに耐えきれずに声を上げて笑った。
急な俺の笑い声に肩が跳ねる巡流の顔色はあまりよくない。俺と2人きりでこんな内緒話にストレスでも感じているのかな、ならこんな作戦自体にもだいぶ神経をすり減らしていることだろう。それならば巡流のいうことはわかる。もう少し、自分が悪役にならない方法はないのか、ってね。
「ないよ、他に方法なんて」
「っ、」
「ほら、そろそろ生徒会室行った方がいいんじゃない?きみにはやることがたくさんあるんだから」
何か言いたいことがあるようだ。しかしそれをぐっと飲み込んで無言で部屋から出て行ってしまう巡流の後ろ姿に口元が緩んで仕方がない。こんなの笑わないでいろという方が難しいだろ。
1人になった室内でついに耐えきれないと笑い声を漏らした。
「さぁて、お馬鹿さんはどこまでできるかな…?」
彼自身の行動に期待なんてしちゃいない。
彼をどう使うか、どう動かすかが楽しみで仕方がないんだ。絶対絶対面白くなる、面白くならないはずがないんだもの。
やっと準備が整った。
まだまだ物語は始まったばかりだ。
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