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「それで、戸際。お前はどうしたんだ?」

「えっ、俺ですか?俺は……あれ、俺何してましたっけ」

「おまえは…」

思い返すように宙を見上げる戸際にはもはや怒る気力もわかない。以前からこんなにも抜けているやつだっただろうか。否、クラスSに恥じない程度には仕事の手際もよかったし要領も悪くなかった。多少言動については不安なところはあるものの、任せた仕事はしっかりと遂げてくれていたしそれなりに信頼もあったはずだ。しかしこの数週間、俺が戸際に頼んだ仕事がことごとく失敗しているのに戸際は気がついているだろうか。いったいお前の身に何があったというのだ。

「快斗、会長ブチ切れる3秒前だよ」

「え……ひい……!」

戸際をからかうように岩村は耳打ちをして笑う。俺の顔を伺うなり、みるみるうちに青くなって行く戸際の顔色にお前なぁ、と岩村を睨みつけた。

「戸際くんは巡流に仕事の説明をしていたよ。巡流はだいぶ理解したみたいだし、それで十分ではないでしょうか」

「ふ、副会長!」

まるで天の助けを得たように輝く瞳で北条に視線をやる戸際にため息をついた。
確かに新しく生徒会に参加してきた響には誰かが仕事の説明をこの忙しい中でもしなければいけなくて、それは一つ俺の中でも気がかりだったのは事実である。
北条の諭すような視線に、わかってるよと首を振る。今戸際にかけるべきは労いの言葉だ。

「よくやったな」

「っ、会長〜〜!!」

俺を見上げうるうると犬のように目を潤ませる戸際に、そんな目で見るなとデコピンをお見舞いした。

「響。どうだ、やっていけそうか?」

「あっ、はい。快斗も丁寧に教えてくれたし・・・とりあえずは」

「そうか。わからないことがあったらすぐに聞いてくれ」

頷く響に先ほどの光景を見る限り、役員とは何やらもう仲良くしているみたいだしとりあえずは大丈夫そうだな、と視線を腕時計に移す。仕事が進んでいるか心配で生徒会室へ立ち寄ってみただけで、この後役員会議が予定されているのだ。そろそろ向かわなければ、生徒会長が遅刻だなんて示しがつかない。
北条と不意に目が合った。時間を気にする俺にこの後何があるのか気が付いたのか、北条はここは任せて、と言わんばかりに無言で頷いた。

「・・・それじゃあ、俺はこの後会議があるからこの辺で。岩村は提出した書類のほかにもやることはまだあるだろう。戸際はとりあえず響について、響は少しずつでいいから雑務をこなしてくれ。北条、引き続き頼んだぞ」

それぞれに声を掛ければ各々の返事が疎らに返ってくる。それに小さく頷く。北条がいる、何かあったら適当に対処してくれるはずだし特に心配はない。一度生徒会室をぐるりと見渡してから、踵を返して生徒会室を後にした。

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